鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

う〜ん、期待したんですが…:読書録「はだれ」

​・はだれ雪
著者:葉室麟
出版:角川書店(Kindle版)

はだれ雪

はだれ雪


歴史上の人物というか、歴史をベースにした「物語」の中でも、「忠臣蔵」はかなり好きな方です。
「昼行灯」と言われていながら、「いざ」となったら、「なすべきこと」を心に定め、多くの人間を率いながら、「目的」に向かって着々と進んでいき、「なすべきこと」をなす。
そういう人物像としての「大石内蔵助」がいいんですよね。(ホントがどうだったかはともかくw)
その「忠臣蔵」をベースにした葉室麟の新作ということで、かなり期待して(だから単行本価格で購入w)読んだんですが…。
う〜ん、思ってるほどスッキリしなかったなぁ。


前半はかなりイイんですよ。
浅野内匠頭の「最後の言葉」を聞き取り、それを明かさないが故に流罪となった主人公のところに大石内蔵助が訪れるが、その「最後の言葉」を聞こうともせず、それどころか他の赤穂の面々にも明かさないように依頼する。
「なすべきことは決まっている」のだから、と。
これはもう、僕の大好きな「大石内蔵助」です。


ところが中盤以降、話が進んで、焦点が主人公たちに移ると、なんだかここら辺もグダグダになってくるんですよねぇ…。
なんだか大石内蔵助以下、歴史上の人物たちが主人公たちのために「何かをする」って仕立ての話になってっちゃって。
悪くはない。悪くはないんだけど、なんとなく彼らの行動が「安っぽく」見えてしまい、そのことが作品全体の「御都合主義」を浮きだたせてしまいます。
フィクションなればこそ、「史実」の重みを損なうような設定や展開は最小限にすべきだと思うんですけどねぇ。


まあ、これも僕が「内蔵助」ファンな故の文句かなw。
清廉な人物像を描き出そうとする、いつもの「葉室麟」節は本作でも健在です。
それはそれで楽しめますので、葉室ファンには十分かも。