鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

これは良作:読書録「ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学」

・ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学
著者:入山章栄
出版:日経BP社(Kindle版)

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学


題名は「商売っ気」を感じる煽りが入ってるけどw、これはなかなかの作品ではないか、と。
「知」の最先端の紹介という意味では、「『読まなくていい本』の読書案内」がよくまとまってて参考になったけど、「ビジネス関連の学説」という意味で、本書はものすごくよくまとまっています。
MBAはビジネスの実務に役立つ知識を教えてくれる場所。それはそれとして評価しながら、一方で学会において議論されている「学説」はそことはやや違うところに進んでおり、本書はその最新の情報を一覧してくれる内容となっています。


まあ、「学説」っていうのは「点」ですね。
そこを深めていくことで、精度はどんどん高くなるけど、いわばそれは「部分最適」。
「人間」や「社会」を相手にする「ビジネス」は、それに対して「全体最適」を考えなきゃいけない分野だから、自ずとそこに「ズレ」は生じる、
ただ「全体」だけを考えていて、「部分」を考えないと、個別具体例を「汎用」と見てしまったり、独りよがりになったり、時代や社会の変化を考慮しない考え方になったり…と、これはこれで役に立たなくなってしまう。
「部分最適」を把握しつつ、「全体最適」にどう活かしていくのかを考える…っていうのが、「ビジネス」「経営」に求められる姿勢なんでしょうな。


<経営学は何を提供できるかというと、それは(1)理論研究から導かれた「真理に近いかもしれない経営法則」と、(2)実証分析などを通じて、その法則が一般に多くの企業・組織・人に当てはまりやす法則かどうかの検証結果、の二つだけです。そして、この二つを自身の思考の軸・ベンチマークとして使うことが、経営学の「使い方」だと私は考えています。>


バランスのとれた考えだと思います。
この「思考の軸として使う」ということが、「部分最適」から「全体最適」に…ということじゃないかと、僕は考えてるんです。


紹介されてることは、どれも参考になります。
「どっかのビジネス書でも紹介されてたな」って学説も少なくないんですが、こういう風に概覧してくれるのは、やっぱり頭の整理に役立ちますよ。


・三つの競争の型:IO型/チェンバレン型/シュンペーター型
・コスト戦略と差別化戦略
・両利きの経営:知の探求/知の深化
・コンピテンシー・トラップ
・コンポーネントな知/アーキテクチュアルな知
・トランザクティブ・メモリー:「what」ではなく「who knows what」の情報共有
・シェアード・メンタル・モデル
・ダイバーシティ経営:タスク型の人材多様性/デモグラフィー型の人材多様性
・リーダーシップ:トランザクティブ型リーダー/トランスフォーメーショナル型リーダー


ちょっとメモっただけでもこんな感じ。
まあカタカナが多いですなw。ここら辺、「学者っぽい」けど、読んでみると実に現実をよく反映した見方だと思いますよ。
いろいろ考えさせながら読んだし、今もそれをキックとして、自分の組織について考えているところです。


年末最後に読み上げた本が(多分)これ。
読書体験としては悪くない「締め」だと思っています。