鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「ワーク・ルールズ!」

・ワーク・ルールズ! 君の生き方とリーダーシップを変える
著者:ラズロ・ポック 訳:鬼澤忍、矢羽根薫
出版:東京経済新報社(Kindle版)

ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える

ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える


グーグルの人事部門のトップがグーグルの人事制度や仕組みについて、採用/権限/育成といった広範囲な視点から論じている作品。
以前「How Google Works」を読んでたんで、「今更、読まなくてもいいかなぁ」とも思ってたんですが、読んでみるとナカナカ刺激的でした。


「スマート・クリエイティブ」を求めるグーグルにおいて最も重視されるのは「採用」
キビシイ採用を経て選抜された優秀な人材に対して大胆な「権限委譲」を行うことで、彼らの創造性を制限せず、伸張させる。
グーグルの人事制度に関してはこんな印象を持っています。
読み終えて、大枠においてその方向性に変わりがないことは確認できます。
「優秀な人材を選抜して採用できるからできること。自分たちじゃこうはできないよ」
まあ、それはそうなんですが、具体的かつ詳細に論じられたその内容を見ると、結構勝手な思い込みがそこにはあるな、と気付かされます。
そのことをよく考えると、それはそれでインスパイアされるものの、それなりにある...と。


「優秀な人材を選抜」
具体的には
「世界(特に欧米)のトップ校のみから採用し、その採用試験にはフェルミ推定を使った奇天烈な問題が出てくる」。
初期の頃は確かにそうだったようですが、だいぶ様相は変わってきてるようです。
「奇天烈な問題」が姿を消したわけじゃないようですがw、そこに重みが置かれてるわけではない。むしろ求める「職種」を十分に分析した上で整備された「定型質問」が用意されていて、それへの応対から採用者の絞り込みを分析的に行っている。その結果は「トップ校」に偏重したものではないようです。
具体的な質問文なんかも紹介されてるんですが、これ、別に特殊なもんじゃないですね。むしろ傾向としては私が勤める会社でもこういうアプローチがされてる傾向があります。
違うのは「新卒一括採用」が主流なとこと、データの活用の仕方。
ま、「新卒一括採用」だと、こういうデータの活用やフィードバックはあまり意味がないのかもしれませんがね。


人事制度に関しては「社員にできる限り裁量権を与える」ってことにあるんですが、これが徹底していて、グーグルではマネージャーの「権限」をいかにチームに落とすかということを実に丁寧、徹底的にやっています。
<職場に関する崇高な願いのひとつは、職場とは社員が自由に創造し、開発し、成長できる避難所だというものでなければならない。>
グーグルといえば「無料の社員食堂」のような手厚い福利厚生制度が有名ですが、もちろんそれも重要なんですが、その目的は上記の実現にあります。
そのためマネージャーや会社の「上から」の提供や押し付けよりも、社員自らの「発意」が重視され、社員の自律性を促進するためにマネージャーの権限は徹底的に委譲されます。
昇進評価でさえそうなんですからね。


グーグルらしいいえば「データの徹底活用」。
マネージャーの権限を委譲させることができるのも、その判断を高度なデータ分析が支え、補完し、客観的に修正してくれるからです。ここがグーグルらしさであり、この人事制度が普遍性を持ち得るポイントでもあるんじゃないかとすら感じさせられました。
いわゆる「下位10%の社員を解雇する」というジャック・ウェルチのGEに人事制度への言及もありますが、GEでさえ、機械的に解雇してたわけじゃないようです。
まずは「10%」の人材を特定し、その支援を行うことで、人材の育成につなげていく。
そこにもデータは活用されます。


なんにせよ、グーグルという会社は「人材が全て」ということをよくわかっています。
「だから優秀な人材を採用する」
然り。
しかしそこで終わりではありません。
そこからチームワークの中で活躍できる人材に如何に支援していくか。
ここのメンバーが最大限自律性を発揮できるような「仕組み」をどのように組み上げ、運用していくのか。
活躍する人材に如何に報い、活躍しきれない人材を如何にサポートしていくのか。
実に丁寧な人材支援を、徹底的にデータを活用しながら行っています。


<ピープル・オペレーションズで働く私たちを結びつけるのは、仕事で惨めな思いをする必要はないという事実だ。仕事は気高く、精力的で、刺激に満ちたものになれる。その事実が私たちを駆り立てる。>
<ほかの会社も自分にふさわしい人を採用できるようになれば、そこで働く人たちにとって、仕事は目的を達成する手段ではなくなり、充足感や幸福をもたらす源になるかもしれない。1日が終わるときにみなぎるエネルギーを感じ、自分が成し遂げたことを誇りに思えるかもしれない。
それもまた、うれしいではないか。>


グーグルだからできる?
確かに。
でもそれはこんな理想や信念を掲げた人が働いているからかもしれません。
考えさせられましたよ、ホントに。