鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「大林宣彦の体験的仕事論」

・大林信彦の体験的仕事論 人生を豊かに生き抜くための哲学と技術
著者:大林宣彦、中川右介
出版:PHP新書

大林宣彦の体験的仕事論 (PHP新書)

大林宣彦の体験的仕事論 (PHP新書)


<この本は、「芸術家によるビジネス指南書」というコンセプトで作られる、世にも珍しい本です。その「芸術家」は映画作家・大林宣彦。>


ほう?
確かに大林宣彦は自分の制作会社を持ちながら、大手の映画会社の商業作品も撮れば、自主映画的な作品も継続的に撮りつつ、今も「現役」という珍しい存在ではあるけど...。
ってな感じで手に取ったんですが、「ビジネス指南書」?
この点はどうかな、と。
ただ「仕事論」としては結構面白いかもしれません。


でもそれ以上にやっぱり面白いのは「大林宣彦」史。
77歳にして未だ現役ですから、「総括」は早いといえば早いんですが、本人がある種の「総括」的なスタンスを意識しているので、そういう色彩の強い語りになっています。
そして相変わらずの「語り上手」。
一気に読まされました。


個人的に一番の読みどころは黒澤明、小津安二郎ら先輩監督や、相米/根岸/森田らの後輩監督等、日本人監督との交友について語ってるあたりでしょうか。角川春樹もその中に入りますかね。
割と斜に構えた感じでやってきたところがあると思うんですが、そこらへんの「構え」がなくなってきてて、ざっくばらんに語ってくれていて興味深かったです。


「語り」としては「戦争/平和」に対するスタンスも興味深い。
「この空の花」「野のなななのか」という直近2作品はそこら辺をかなり正面から捉えた作品のようですが(僕はまだ見てないんですけど)、その背景にある「想い」がかなり正直に語られています。
今の政権や風潮への危機意識にも触れられていて、
「昔もこうだっけ?」
と思ってたら、そこら辺の経緯についても(反省とともに)語られています。
2010年に大病(心臓発作)されたようですね。
その経験と「3.11」。
随分と思うと思うところがあったようです。


<戦争で自身の人生の夢を砕かれた父と母が、誰もが自由にわが夢を叶えられることこそが「平和」というものだ、と送り出してくれた映画の道。>


そんなことにかなり「意識的」になってるんでしょうね。


一番最後に見た大林映画は「なごり雪」かな?
「この空の花」「野のなななのか」はやっぱり観ておきたいですねぇ。
iTunesに入らないかな?


(本筋とは関係ないんですが、皇太子とのエピソードも興味深かったです。

<殿下はね、僕の『転校生』が大好きだと仰っていて、『ふたり』のビデオを差し上げたこともあります。>

なんとなく僕は皇太子が好きなんですが、似た嗜好を持ってるのかな、と。
いや、どうでもいいんですがねw)