・東京帝大叡古教授
著者:門井慶喜
出版:小学館
- 作者: 門井慶喜
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/03/13
- メディア: 単行本
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明治時代を舞台にして、歴史上の人物を交えながらの歴史ミステリー連作。
・・・ってのを期待して読んだんだけど、ちょっと違ってたかな?
いや、大筋はそういうもんなんですけど、それぞれの短編の独立の度合いが思ってたより低くて、長編的な色合いのほうが強くなってるんですよ。
その分、一作ごとの「完成度」は低くなってて、ちょっと「う〜ん」って感じでした。
テーマは「ポーツマス講和」と「日比谷公園焼き討ち事件」。
ここに大東亜戦争につながる
「政府の情報公開の下手さ」「ジャーナリズムによる好戦的な扇情」「庶民の政府への突き上げ」「政党政治の腐敗」etc,etc
といった条件がすでに表出してて、戦後70年のタイミングでこの時期を取り上げるってのはナカナカ慧眼・・・とは思うんですがね。
語り手の「阿蘇藤太」の「正体」はその意図を明確化しています。
ただ、そうだとしたらもっと突っ込んで欲しかった。
登場する歴史上の人物と、フィクションである叡古教授の「想像上の」ディスカッション。
このテーマだったら是非ともそれを見たかったですね。
もちろん「種明かし」のシーンでそれらしきところはあるんですが、ここはもっともっと、作品のバランスを崩すくらいの分量と深さでやるべきだったんじゃないかと思います。
参考にした「ウンベルト・エーコ」並みにね。
本作くらいだと、軽い歴史書レベルですから。
まあ僕の読み込みが足りないってのはあるかもしれませんがね。
灰森氏のエピソードあたりにはそんな気もします。
でも全体としてペダンティックな雰囲気が足りないのは確か。
こういう作品で、この題名なら、絶対にそういうトコに踏み込むべきだったと思いますよ。
書くのは大変かもしれませんがw。