鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「今ここにいるぼくらは」

・今ここにいるぼくらは
著者:川端裕人
出版:集英社文庫

今ここにいるぼくらは (集英社文庫)

今ここにいるぼくらは (集英社文庫)


塾のテキストの問題に抜粋分が出題されてて、
「読んでみたいなぁ」
と息子が言ったので、買ってみました。
読み終えた息子の感想は、
「面白かった!」。
続けて読んだ妻は、
「いい本だよ」。
で、読んでみたんですが、確かにナカナカの作品でした。
僕自身は「川端裕人」作品は「夏のロケット」を読んでるんですが、、
「こんなにいい作家だったかなぁ」。
失礼ながらw。
(「夏のロケット」は面白かった覚えはあるんですけどね)


作者は「1964年」生まれ。
描かれるのは作者と同年代の少年の姿で、従って僕とも同年代です。
小学生時代の7つのエピソードが、連作で描かれています(並びは年代准じゃないんですけどね)。
中学受験のテキストに出るくらいだから、「子供向け」かと思ってたんですが、全くそんなことはないんですよね、これが。
おそらくは大人になった主人公が、こんな風に語りかけます。


<ぼくたちは一人ぼっちだ。それも悪くない。>


少年時代を描いた作品というと、「友情」や「淡い恋」みたいなものがテーマになりがちだけど、本書では「友情」に対するスタンスが独特です。
「友情万歳!」
じゃなくて、本書が描くのはその陰にある「孤独」。
それでいてペシミスティックにならないところが本書の持ち味でもあります。(「淡い恋」はシッカリありますがw)
ちょっとヘミングウェイの「ニック」ものを思い出しました。(そこまでじゃないけど)


連作をつなぐエピソードでもある7作目はちょっと「作りすぎ」な感じもあるんですが、全体としては水準の高い作品となってると思いますね。
しかしこれが中学受験のテキストにチョイスされるってのも・・・。
難しいなぁ、中学受験国語。