鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「世論調査とは何だろうか」

・世論調査とは何だろうか
著者:岩本裕
出版:岩波新書

世論調査とは何だろうか (岩波新書)

世論調査とは何だろうか (岩波新書)



「週刊こどもニュース」3代目お父さんが論じる・・・と言うより、僕にとっては「高校時代の友人が書いた」と言った方がしっくりくる作品。
もっとも、知ったのはFacebook経由ではあるものの、ちょうど「世論調査」については詳しいことを知りたいなと思っていたので、個人的興味にも合致するタイミングで読めたって感じがあります。
さすが、「お父さん」。実に分かりやすかったですし(こういう言い方は嫌がるかなw)。


僕自身の「興味」のきっかけは「イギリス総選挙」と「大阪都構想住民投票」。
「総選挙」の方は、事前の世論調査での「接戦」予想が大きく外れ、保守党が大勝。「大阪都構想」の方は、事前予想通り「否決」とはなったものの、世論調査の予想よりもはるかに「接戦」の結果・・・と言うことで、どちらも「世論調査」の精度に対して「?」な結果だったと思います。
最近、世論調査って頻繁に報道されてる気がするし(その理由は本書で分かりました)、それに世論も政治も影響されてるような気配もあって、で、「世論調査って一体」・・・てなったわけです。


本書では「世論調査」の歴史から、現在の状況(手法)、課題や問題点から、その影響範囲、さらには「読み解き方」「リテラシーの持ち方」にまで言及されていて、それでいた分かりやすくまとめてくれています。友人の作品と言う訳じゃなく、これはナカナカ大したものだなぁと思いましたよ。「世論調査」を語る上で必要な基本知識は本書でカバーできるんじゃないでしょうか。
漠然と「固定電話を使った調査の限界」や「インターネットの可能性」みたいなことを考えてたんですが、いやはや浅墓でしたw。そんなことは考えられ、検討の視野に入れたうえで、今の「世論調査」はあるわけですね。(ま、そりゃそうかw)


一方で「難しいな」とも改めて思います。
「イギリス総選挙」も「大阪都構想住民投票」も本書の執筆後のことですから、もちろん触れられてないんですが、本書の中でインターネットを使った世論調査の有望な可能性として挙げられてる「ユーガブ(YouGuv)」。
ちらっとネットサーフィンした感じだと、彼らも総選挙の予想は外してるんじゃないかと。
「大阪都構想」では年齢別の投票行動の違いが議論になっていたりしますが、それが本当だとすると、現在の手法では把握しきれない層の投票行動が影響したとも考えられます。
ここら辺は今後検討されることなんでしょうが、現在の「世論調査」のある種の「限界」が顕われてきてるような気もして、気になるところです。(どうですかね、岩本くん)


まあバラエティの怪しい「アンケート結果」から、内閣や政策への支持をはかる調査、更には極めて精緻な仕組みの上に成り立っている選挙関連の世論調査(あるいは速報)まで、どういう「距離感」を持つべきかっていうのは、自分なりに理解できました。
広く読まれ、多くの人がそういうスタンスを身につけてほしい。
・・・とは思うものの、なかなかそこまで読まれないってことも課題ではあるんでしょうなぁ(どっかの新書ランキングではベスト10に入ってたそうですが)。
ここら辺は「知性/反知性」問題にも絡んでくるところでしょうが、更に「難しい話」ではあります。
やっぱり「分かりやすくニュースを伝える人」ってのは必要だと思いますよ、岩本くん。