鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件」

・ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件
著者:ミッチ・カレン 訳:駒月雅子
出版:角川書店(Kindle版)

ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件

ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件



ベネディクト・カンバーバッチの「SHERLOCK」以来、「ホームズ」物は何度目かのブームの気配。
同じころにロバート・ダウニーJrの「アクション冒険」風ホームズもあったけど、ちょっと毛色を変えて、老境を迎えた(93歳!)ホームズ・・・と来たか。
さて、枯れたホームズがどんな推理を見せてくれるのか?
そしてワトソンは・・・


とか思って読み始めたら全然違うやん!


「SHERLOCK」は2010年の放映だけど、本作は「2005年」の発表。
ま、流行と関係なく書かれた作品のようです。
そして内容も「推理物」って言うんじゃなくて、むしろ
「老い」や「孤独」、「絶望」
と言った「人生」の翳りを描いた「文学作品」的な色彩が強く、読み終えると、なんとも寂寞とした気分になります。


これはこれで味わい深いっちゃあ深いんですが、読む前に「イアン・マッケラン主演で映画化される」なーんて情報も入ってたんで、ついついエンターテインメント系の作品を想定しちゃってたんですよね。
その先入観で読むと、いくつかある「事件」の展開は「ヌルイ」し、日本訪問はなんだか「唐突」な感じがするし(描写としては違和感なく、よくできてると思いますが)、全体として漠とした印象になっちゃいます。
「93歳」という主人公設定からすると、この「印象」そのものが作者の意図なのだと、分かるんですがね。



読み終えて振り返ってみると、それなりに味わいと余韻のある作品だとも思います。
ワトソン、ハドソン夫人、マイクロフトとの別れも、それはそれで感慨深いものがありますし、それを乗り越えてきたホームズがたどり着いた心境を思うと、こういう寂しさも分からなくはないというか・・・


うーん、でもやっぱり、「頭脳明晰」「傍若無人」「傲岸不羈」なシャーロックが見たかったっちゃあ、見たかったですかね。
少なくとも所謂「ホームズ」ものを期待してると、肩透かしなのは間違いないと思います。


映画はどうかなぁ。
この原作どおりに作るのは、ちょっと難しいんじゃないかと思うんですが・・・