鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「コンテンツの秘密」

・コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと
著者:川上量生
出版:NHK出版新書(Kindle版)

コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書)

コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと (NHK出版新書)



ドワンゴ会長がジブリでのプロデューサー見習いの経験から、
「コンテンツとは何か?」「クリエイターは何をしているのか?」
について語った作品。
まあ「ニコニコ動画」で時代の寵児となった経営者が「なんでジブリのプロデューサー見習いなんかやってんの」とは思ってたんだけど(しかも<一応はぼくが経営していることになっているドワンゴに出社するのは毎週水曜日の一日だけ。あとは鈴木さんとずっといっしょの毎日です。>と、どっちが本業かって状態)、その経験から出てきたのが、「コンテンツ」に関する概念的な論考。
いや、宮崎駿、高畑勲、鈴木敏夫の面々に加え、庵野秀明なんかも出て来て、具体的な創作の話にも踏み込んだ話が出てくるので、野次馬的な面白さもあるんですが(それが目的で買ったんだけどw)、予想以上に概念的な話の多い本だったなぁ、と。
ドワンゴの経営者がこんな本を書く。
一番面白かったのはソコかもしれません。


割と結論はシンプルかな、とも思います。


<クリエイターの脳のなかのイメージを再現するのがコンテンツである。コンテンツを媒介として、クリエイターは脳のなかのイメージをユーザーに伝える。>


この「クリエイターの脳のなかのイメージ」について、
「現実の模倣」であるが、それを構成する「客観的情報量」ではなく、それがクリエイターのなかで再構築された「主観的情報量」が重要。
てな話とか、
そのクリエイターの「主観的情報」が、如何に受け手(視聴者)の「主観的情報」になるのか。
とか。
そのなかでオリジナリティや天才性というのはどう定義されるのか、とか。
まあ面白いっちゃあ、面白い。
結局コンテンツは「ワンパターン」に収斂してしまう、なんて話もね。
IT絡みの人だけに、良く整理されて論じられていて、なかなか楽しめるし、感心もさせられます。
「で、経営者であるあなたは、どうするつもりなの?」
って疑問は残りますがw。
(鈴木氏に言われてるように、「表現者」を目指すのか?もっとも、今のビジネスそのものが「クリエイター」的と言えるかもしれませんが)


ホリエモンなんかの本を読むと、確かに「色々考えてるな」とは思いますが、即物的っちゃあ、即物的。その「即物度合い」が読みどころだったりしますw。
それに比べれば、本書なんか、「浮世離れ」とも言えるでしょう。それでいて、どこかシャープな印象があるのが、「らしい」って感じですかね。
「オススメ」とはとても言えませんが、「川上量生」という人物への興味は膨らみました。
そういえば、愛媛出身なんですよね。この人w。