鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「ヴァン・ショーをあなたに」

・ヴァン・ショーをあなたに
著者:近藤史恵
出版:創元推理文庫(Kindle版)

ヴァン・ショーをあなたに (創元推理文庫)

ヴァン・ショーをあなたに (創元推理文庫)



「タルト・タタンの夢」に続く、フランス料理のビストロ「パ・マル」を舞台にしたシリーズの第二弾。
と言っても、本作の場合、収められた7作の短篇のうち最後の二作は探偵役の「三舟シェフ」のフランス修業時代の話になるので、<パ・マル>は出てこないんですがね。
(その前の5本目も、主観がそれまでのギャルソン(高築)から客に移っているので、ちょっと異色な感じになってます)
日常的なチョットした「事件」を扱う、所謂「日常ミステリー」に属するシリーズで、「サクリファイス」シリーズでも見せてくれた微妙な人の心の動きを実に上手く描く作者の手腕は本作でも健在です。


でも正直言って、本作については後半の今までとは異なる視点での作品を並べてる辺りに「?」な感じがありました。
作品としての水準に文句はないんですよ。主人公(三舟)の過去を描く話なんかも、シリーズを彩る作品としての意味はあると思います。
でも、それがこんな風にまとまって収められちゃうとなぁ。なんかこれだと、
「今までの『パ・マル』を舞台にした話を作るネタが切れちゃって・・・」
って感じがしちゃうじゃないですか(ホントにそうかもしれんけどw)。
こういうのはシリーズのアクセントとして、短編集1冊に1作くらいの割合で入れるのが良い塩梅なんじゃないですかね。
それぞれ話は楽しめるんだから(5本目の「氷姫」なんか、なかなか・・・)、余計なお世話ではありますがw。


「ネタ切れになったから、もしかしたらシリーズも本作で・・・」
なんて懸念も感じちゃったりもしましたがw、ちゃんと作品は書き続けられていて、2016年には三作目も出るとのこと。
来年の話ですがw。


まあ多分三作目も読むとは思います。
それが全部「三舟」シェフの「昔話」じゃありませんようにw。