鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「ジョナサン・アイブ」

・ジョナサン・アイブ 偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー
著者:リーアンダー・ケイ二ー 訳:関美和 序文:林信行
出版:日経BP社(Kindle版)

ジョナサン・アイブ 偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー

ジョナサン・アイブ 偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー



アップルのデザイナーで、スティーブ・ジョブズと並んで、ジョブズ復帰後のアップルの快進撃を製品面で支えてきたジョナサン・アイブの伝記。
…は半分で、残りの半分はアイブが手がけてきた製品(ほとんどはアップル)に関する考察かな。
割と前に出てこない「ジョナサン・アイブ」の人物像が興味深いのはもちろんなんだけど、彼やジョブズが提示する「製品」に対するデザイナー主導の思想、そこから生まれる素晴らしいアップル製品の数々が何より魅惑的です。
読み終わると、何かアップル製品を買いたくなります。いや、本当にw。


「デザイナー主導」と言うと、何となく「見かけ重視」って感じですが、ジョブズやアイブが考える「デザイナー主導」ってのはそう言うんじゃないですね。
何より根本にあるのは、
「ユーザー重視」。
言ってみれば「使い勝手」が一番重視されていて、(見かけとしての)「デザイン」や「機能」はそれに従属するものと位置づけされます。従って「使い勝手」に邪魔になるようなデザインも機能も取り除かれていく。
これはiPhoneを使ってみればすぐに実感できること。
単なるとんがった思想としての「ミニマリズム」とも、また違うわけです。


こうした考え方を突き詰めていった結果、アイブの影響範囲はデザインや機能だけでなく、「製造工程」そのものに及ぶことになります。
多分、「デザイン主導」において最も重要なのは「ココでしょう。
「ユーザー体験」「使い勝手」を追求する中から、素材から製造工程までにも徹底的に影響下に置く。
この体勢がジョブズが示し、アイブが具体的に描き、クックが支えるアップルの「秘密」ではないかと思います。
それが構築される過程が本書のメインストーリーとも言えますし、MacBookAirの「ユニボディ」をその終着点として描く本書の構成は実に見事とも思います。
ま、実際にはその後も新しいアップル製品は出てるわけですが(iPhone6PLUSとか)、作品としてはここでまとめるのは、スッキリしています。


見方を変えると本書はアップルへの懸念も炙り出しています。
強力な(ある意味強引な)リーダーシップを持っていたジョブズに比べて、アイブはそこまでの「強引さ」は(経歴からも)ないように思います。
「使い勝手」を最上位に起き、そこに全てを従属させる体勢はジョブズのビジョンもあって完成していますが、それがそのまま維持される保証はありません。何よりこれだけ変動の激しい業界で、「今まで通り」ってのは殆ど「後退」さえ意味します。
新しい「変革」が求められた時、果たしてアップルが「ユーザー体験重視」「使い勝手至上」の思想を徹底できるか、それを推し進めることを経営として判断することができるのか。
ジョブズの薫陶を受けたクックがバックにいる限り大丈夫なのかもしれませんが、Mapをめぐるゴタゴタなんかを考えると、一抹の懸念はあります。
そのことに気づき、反省すればこそ、アイブを中心とした体制を構築し直したのだ…とは思うんですがね。
そういう意味じゃApple Watchの出来は気になるところです。(今のところ購入予定はありませんがw)


まあでも面白い本でしたよ。
iPhone,iPad(mini),MacBookPro,appleTVを使っている(気がつけばこんなにもw)僕にとっては、自分がこれらの製品に対して感じ、考えていることを再確認する機会となりました。


あーでも、MacBookAirが欲しくなっちゃいましたよ〜。
(取り急ぎ6Plusのカバーは取っちゃいましたw)