鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「黒書院の六兵衛」

・黒書院の六兵衛<上・下>
著者:浅田次郎
出版:日本経済新聞出版社(Kindle版)

黒書院の六兵衛 (上)

黒書院の六兵衛 (上)

黒書院の六兵衛 (下)

黒書院の六兵衛 (下)


日経新聞に連載されてた頃は、
「やっぱ、こういうのはまとまって読まないと」
少し前に書籍化されて、
「ハードカバーを持ち歩くのは・・・」
で、待望の電子書籍化。ハードカバーよりは少し安いですし。


一気に読み上げ、堪能させていただきました。
浅田次郎作品としては「幕末もの」、「新選組」を核にした「侍」ものの系譜に連なる作品でしょうか。
「侍とは何か」
答えのない、しかし決して譲れるもののない「何か」を巡る物語。
本作ではその概念としての「侍」が具現化します。
果たして「何者なのか」
それを突き詰めるのは野暮ってモンでしょう。
一応は「金で旗本の身分を買った苦労人」ってことになってますが、そのことそのものには指して意味がない。
この男に正対した時、「何」を見、感じるのか。
「現人神」である明治天皇が「何か」を彼から受け取った「らしき」ラストは象徴的です。


「新選組」から発した「侍」を巡る物語は何処に向かうんでしょう?
概念としての「サムライ」は、おそらく西南戦争で西郷隆盛とともに滅びます。
<「オイタチャコリカラドゲンスットナ」>
西郷のこのつぶやきは、それを暗示しているのでしょうか?
そういう物語がいずれどこかで語られるのだとすれば、それもまた読んでみたいものだと思います。


いやぁ、しかし相変わらず泣かしますな。
「壬生義士伝」ほどではありませんが、本作でも何度か「ウルっ」と。
一番は、
<「さればこそ」>
こういうのが、ホントに上手い。


長さにおそれをなして手を出さずにいる「中原の虹」。
やはり読むべきでしょうか?