鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「ゴーストマン 時限紙幣」

・ゴーストマン 時限紙幣
著者:ロジャー・ホッブズ  訳:田口俊樹
出版:文藝春秋(Kindle版)

ゴーストマン 時限紙幣

ゴーストマン 時限紙幣



ノアール/ハードボイルド系で評判になってる小説です。
作者は20代とか。
確かにそうは思えない完成度の高さだと思います。


系譜としては「悪党パーカー」シリーズですかね。「(銀行)強盗」が絡んだりしますし。
アンドリュー・ヴァクスの「バーク」シリーズなんかも思い出しました(そういや、最近見ませんが、どうなってるんでしょう)。
過去と現在の「事件」が並行して描かれ、どちらも緊張感とドライブ感のある展開です。「パーカー」に比べるとバイオレンスの度合いは数段アップしていますが、これは「時代」でしょう。


個人的には非常に楽しんだし、続編も読みたいなと思いました。映画化もされるようですが、これも面白そうではあります。
ただ主人公のキャラクターについては「?」の部分もあります。
三人称の「パーカー」と違い、一人称で描かれる本作は、「バーク」シリーズと同様に主人公の心情にも踏み込んだ描写がされるんですが、ちょっとここが薄いんですよ。
こういうバイオレンスの世界に踏み込み、「ヤバい」案件に手を出す理由が「刺激(生き甲斐)を求めて」ってのはどうでしょう?終盤の展開にはそれを反映した「クレイジー」な言動がありますが、読まされるのは間違いないものの、その心情背景がコレだとちょっと興醒めというか・・・。
それ以外、理屈付けしようがないのかもしれませんが。


「母親」の過去や、「師匠」との関係など、人間らしさを窺わせる設定もあるので、ここら辺は整理しきれてない部分なのかもしれません。
こういうんだったら、「パーカー」同様、三人称視点で描いた方がスッキリしたかもしれないな、とは思いましたね。


とは言え、かなり「読ませる」作品なのは間違いありません。
シリーズ化されるというのも納得の出来。
出来れば日本でもソコソコ以上は売れて、ちゃんと続編が翻訳されることを祈っております。