鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「そして、メディアは日本を戦争に導いた」「日中韓を振り回すナショナリズムの正体」

・そして、メディアは日本を戦争に導いた
・日中韓を振り回すナショナリズムの正体
著者:半藤一利、保阪正康
出版:東洋経済新報社(Kindle版)

そして、メディアは日本を戦争に導いた

そして、メディアは日本を戦争に導いた

日中韓を振り回すナショナリズムの正体

日中韓を振り回すナショナリズムの正体



何かどっかのブログか何かで「ナショナリズム」に関する話題があって、その中で「日中韓を〜」が紹介されてたんですよね。
だから先に読んだのは後者の方。読んで前作があるのを知って、後から「そして、メディアは日本を導いた」を読みました。ま、順番はあんまり影響しない作品だとは思いますが。



「そして〜」は日中戦争・第二次世界大戦に向かう中、メディア(新聞・雑誌)がどういう役割を担ってきて、どんな風に「全滅」したか、について語った本です。
で、「日中韓を〜」の方は、日本と韓国、中国との歴史的関係について近代の構図の中で語り、「ナショナリズム」というのがどういうもので、そのような構図になっているのか。それが歴史上、どんな風に生まれ、利用されてきたかについて語られています。



どっちの作品も「歴史」を語りながら、「現代(現在)」に対する強い危機意識から語られています。
ま、「安倍政権」に対する懸念ですよね、有り体に言えば。
その「歴史修正主義」的な姿勢と、そこに流される日本社会の現状に対する危機感が、「戦争」を知り、「歴史」を知る二人には強くあります。
「そういや、宮崎駿もそんな感じだったなぁ」
と、先日観た「夢と狂気の王国」を思い出したりもしましたね。



まあ「歴史的事実」に関してはシッカリしてますよ、この2人ですから。
僕なんかだと、
「え〜、そうなんだぁ」
と驚くような内容ではありませんが、それでも「雑誌」と「新聞」の戦前の権力に対するスタンスとか、「日韓併合」に関する韓国の恨みやら、戦後の混乱期における「復讐」の経験やら、「ほう?」って感じのところはありました。
僕でさえそうですからね。
後の世代にとっては、本当にここら辺のことはフィクションにしか思えないかもしれません。



二人のスタンスは「左翼」にも厳しくて、まあバランスのとれた「保守」というところ。
それが何やら「左翼」的にすら見えちゃうところが「現在」の立ち位置なんでしょう。
正直、僕も居心地の悪さを感じる時がありますよ。
そのことを再確認する意味はありますね。



本書で「今まではどうだったか」はよくわかります。
でも「じゃあ、これからどうするか」ってとこにはクリアなものはありません。
「もう10年経ったら、この世にいないから」
って半藤さんの言もありますがw、彼らとしてはこうやって「警鐘」を鳴らし続けるしかないし、それが一番重要だってことでしょう。
それをどう受け止めていくかってのは、下の世代の仕事ですわな。



二人は作品の中で
「ネットだけじゃダメ」
「本を読んで勉強しないと…」
みたいなことを言ってるんですが、僕自身は「ネット」に可能性を見ざるを得ないかもとは思っています。
いや、二人が言ってるのは「もっとも」なんだけど、だからってみんなが本を読んで勉強し始めるってのもリアルじゃないでしょう。
確かに今のネット言説には問題が多い。
でも、ものすごいスピードで変化していくのがネット社会であり、その変化の方向性は決して「マイナス」ばかりじゃないんじゃないかと。
例えば、海外のメディアの情報が簡単に入ってくるとか、個人としての繋がりすら、簡単に海外に広がることができるとか。
ここら辺は「権力」の囲い込みに対する重要な「武器」になるんじゃないですかね。翻訳機能なんかがもっと進んだら、このオープン性はもっと前進することになるでしょう。
「現在」が昭和初期に似ているとしたら、ここは「過去」にはなかった条件なんじゃないかと思いますが。
そこに「希望」も感じたりするんですがね。



何やら解散総選挙の話もチラホラ。
僕自身は決して安倍政権に対してネガティブではないんですが(特に経済政策は)、ちょっと「?」ってところは時々あります。
「歴史修正主義者」的なところも含め。
だからこの二人のような「保守」の本堂のようなところからの提言に、政権も耳を傾けたら良いのにな、とは思うんですけどね。
難しいかなぁ…。