鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「日本の論点」「クオリティ国家という戦略」「稼ぐ力」

・日本の論点

日本の論点

日本の論点



・クオリティ国家という戦略 これが日本の生きる道

クオリティ国家という戦略 これが日本の生きる道

クオリティ国家という戦略 これが日本の生きる道


・稼ぐ力 「仕事がなくなる」時代の新しい働き方

稼ぐ力: 「仕事がなくなる」時代の新しい働き方

稼ぐ力: 「仕事がなくなる」時代の新しい働き方



ちきりん氏がブログで、
「大前研一氏の今の考え方を2500円(Kindle価格)で知ることができるなら安いもの」
みたいなことを書いてたので、釣られてKindleで購入しました。
巷間言われている「正体」が本当だとすると、ちきりん氏は「元上司」の作品を紹介したことになりますね。何やら「仲間意識」っぽいものを感じなくもありませんがw、読み終えてみると、非常に刺激になったのも事実です。
このタイミングで、こういう形で整理された本を読むというのは良い経験でした。



<政策提言として一つにまとめたものが1993年の『新大前研一レポート』である。
(中略)
以来、私が世に問うてきた論点で、『新大前研一レポート』に出てこない論点は一つもない。>(「日本の論点」)



とご本人がおっしゃってる通り、三作とも、
「どっかで聞いた話だなぁ」
ってのはあります。
でも、
<この二十年来、この国は何も変わってない>
<『新大前研一レポート』の中で論じた日本を変えるための83法案の中で実現したものは何一つとしてない>
という「現実」の前に、新しい情報や状況・証拠をベースに論点を補強された作品を読むことは、「提言」のアップデートとして意味のあることだと思います。
政策ですからね。
「今」に響かなければ意味はありませんから。



「日本の論点」は、大きく全体的な現在の日本の状況/課題を語った作品。
ここでは「道州制」という統治規模を小振りにした統治組織に関して(毎度のことながら)語られています。
「クオリティ国家という戦略」は、その「道州制」の参考となる国家のあり方を、シンガポールやスイスと言った、実際に成功している小国の実例を引きながら論じたもの。ここで戦略を持って運営され、互いに競争する「道州」のあり方が論じられます。
で、「稼ぐ力」ではその流れの中での「個人」のあり方が語られる・・・と。
当然のことながら重なりもあるし、同じことを繰り返しているような感じにもなっちゃうんですが、この順番で三作を読むのが個人的には一番良かったと思います。非常に整理された形で頭に入ってきます。



加工輸出産業を核にして高度成長を成し遂げた日本が、社会/国際/科学技術環境の変化によって「新しい産業」による立国を必要となっている。
しかしながら強烈な成功体験と、困らない程度の規模の国内市場がその対応を後手に回らせ、そこに適合した統治組織と教育体制が変革を受け付けないまま、現状維持を継続させようとしている。
しかしながら少子高齢化を中心とした国内情勢の変化、ICTの進歩に支えられた急速なグローバル化の進展は「現状維持」を許容することを許さず、日本は「変革」なくしては「衰退」の途を歩むしかない瀬戸際にある。



「まあそうだろうな」
と思います。
提言の方向性にも賛成。
もっともそれで人々が仕合せになるかどうかは、「クオリティ国家」の現状を見ても何とも言えません。まあ「道州制」の場合は大枠としての「国家」が「外」にあるので、そこにセイフティネットが働く余地があるかもしれませんが、それが効きすぎると、結局生産性の高い統治組織運営は出来ませんからねぇ。
等質性/平等性を重んじる現代日本社会で「格差」がどこまで許容されるか、ってのもあります。
大前氏の提言の目指す方向性には「格差拡大」も避け得ぬものとして存在していますから。



ただそういった「課題点」を列挙して、「あーだこーだ」言ってる時間が残されているのか。
問題はここでしょう。
20年同じことを言ってきた。
ただ確実に20年は過ぎ去っており、その過程で対処するための「時間」が失われたことをそれは意味している。



「今」大前氏の提言を読むことの意味はそこにあると思います。
その危機意識は共有出来ますよ。



まあ、橋下氏への期待なんかは(国政への挑戦で)裏切られ、今また再チャレンジに期待ってトコロでしょうか?
本当に大前氏の提言を実現するつもりなら、それはそれで興味深く見て行きたいなと思います。
「教育改革」なんかでは、橋下氏の他に武雄市の樋渡市長なんかも新しいことに取り組んでいます。地方自治体の長から「変革」の芽が成長する・・・という流れが、今度こそは・・・と疑念の念を持ちながらも、どこか期待したりもしています。
繰り返しますが、それで人々が「幸せ」になれるかどうかは分からないんですけどね。



個人的には「教育」のところは特に興味深く読みました。
更にもっと個人的なところでは「英語」でしょうか?
・・・やっぱ、やるべき・・・なんでしょうなぁ。