鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「橋をかける」

・橋をかける 子供時代の読書の思い出
著者:美智子
出版:文春文庫

橋をかける (文春文庫)

橋をかける (文春文庫)



出口氏の読書論の本(「本の『使い方』」)で最後にオススメされていたのが本書でした。
出口氏に対しては比較的リベラルな印象を持っていたので、ちょっと意外な感じもあって(文庫なので)手に入れてみました。
(ちなみに出口氏自身はご自身を「保守」と位置付けられています。日本の最近の「保守勢力」は、何やら原理主義めいてきているので、そことの距離感が私の中で氏の印象につながっているのかもしれません。
日本のリベラルも「何だかなぁ」って状況なんですがね)



本書のベースはIBBY(国際児童図書評議会)という組織の大会での皇后陛下の講演2本です。それに背景やら解説やらを付け加えて一冊の作品にしたもの。
ま、皇后陛下の講演を読めば、いいですかね。他はなんとなく「数合わせ」的印象です。
関係者にとっては興味深い内容なのかもしれませんが。



内容は(出口氏が褒めるだけあって)非常に好感度が高く、格調もありながら、分かりやすい、良い文章です。人柄が窺える語り口で(ま、講演ですから当然でもあるんですが)「良いもん、読んだな」って気分になります。
一方で声高に何かを主張するような内容じゃないですね。「神話の重要性」なんかを語ってるとこには何らかのバイアスを読み取ることも出来なくはないでしょうが、仰ってることは実に常識的な範囲。
このバランス感覚と格調の高さが何やら「天皇家」を象徴してるようで…ってのも、バイアスかかった見方ですかw。



児童文学をめぐる世界には一瞬不思議な雰囲気もあって、その一つの象徴に皇后陛下が見られてるような向きもあるのかな、とも思いました。
ピラミッド型…ではないし、そこに縦のラインは見られないんですが、それでも何らかの繋がりが雲の様に広がっているような印象が、個人的にはあります。
僕自身は「児童文学」という括りには懐疑的なところもあって、「読みたいものを読みたい時分に読めばいいじゃん」と思ったりする一方で、「本には読みどきってのがあるしなぁ」なんて迷いもあるんですけどね。



まあ「本との出会い」ってのはすごくパーソナルなものですよね、結局。
そのパーソナルなところを自ら語った…ってのが(特に表題ともなっている)講演だと思います。
その豊かさに何を見るかってのは、これもまたパーソナルなことでしょう。
「こういうのを読まなきゃいかん」
ってのとは違うと思うし、皇后陛下もそんなことは言ってないと思います。



なかなかそう割り切れないものもあるのは確かなようですが。(天皇家がらみで紹介された絵本は売れるようですし。
…とか言って、我が家にもあったりするんですがw)



追記:日曜に小松に観に行った「武井武雄」氏の「赤ノッポ青ノッポ」に関する記載もありました。
シンクロニシティ?