鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「名探偵に薔薇を」

・名探偵に薔薇を
著者:城平京
出版:創元推理文庫(Kindle版)



本屋の店頭に並んでて、「面白そうだなぁ」と思ったのを、ふと思い出して購入。
知らない作者との出会いっていうのは結構リアル書店が多いんですが、購入がKindleになっちゃうのは何となく申し訳ない気分。
ただ「読みたい時にすぐに手に入る」「スペースを取らない」っていうのは、やっぱり電子書籍(Kindle)にアドバンテージがあるんですよねぇ。
特にエンタメ小説は…。



で、本書なんですが、「2部構成」になってるのは事前知識として知っていました。
「2部」のほうがメインで、「名探偵」が鮮やかに解決した「1部」を受けて「2部」が「驚愕の展開」ってインプットがあったので、
「となると『2部』の方は『メタ』的な構成になってるのかな?」
と漠然と思ってたのですが、これは大外れ。
基本的には同一世界観の中での物語構成・進行となっています。



ただそうだとすると「1部」の残酷表現がどうにも僕には合わないですね。
「これは2部の方で(例えば「作中小説」というように)括弧つきの物語としてひっくり返すから、ワザとドギツイ表現にしてるんだ」
なんて考えてたんですが、全くそんな「仕掛け」はなく。
となると、この残酷なストーリーが、この物語世界においては「リアル」な訳で、
「それはちょっとなぁ」
って言うのが正直な感想です。



「推理小説」としてはよく出来てるとも思うんですけどね。
「驚愕の展開」とまでは思いませんが、「2部」はなるほどヒネリの効いたストーリーになっています。
「動機が薄っぺら」
「死者への敬意が薄い」
「人間関係が図式的」
等々の批判はあり得ると思うし、僕もそうは思いますが、「本格推理小説」の場合、多かれ少なかれこの傾向はありますからね。ここは読者それぞれの「許容度」によるんじゃないかとは思います。(「八百屋お七」を「ロマンス」と見るか、精神異常者による「無差別殺人」と見るか・・・)
僕個人としては「1部の残酷描写なんかを考えると、バランスが悪すぎない?」と感じるので、許容度はギリギリって感じですが…。



全体としては
「推理小説としてはよく出来ている」
って水準の作品だとは思います。
ただ僕個人の好みには残念ながらフィットしないかな、と。
これ以上、「読まなきゃいかんかな」って作家が増えても困るので、それはそれで良いんですけどねw。