鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」

・もうすぐ絶滅するという紙の書物について
著者:ウンベルト・エーコ、ジャン=クロード・カリエール 訳:工藤妙子
出版:阪急コミュニケーションズ(Kindle版)



「薔薇の名前」のエーコと、ブニュエルの脚本家であるカリエールが「本」について語っている作品。
何か題名を読むと、
「紙の書物はいずれ電子書籍に駆逐されてしまう」
って感じなんですが、中身は全然そんなことはなくてw、むしろ
「フォーマットとしては紙は『車輪』と同様に完成されている」
「電子ツールの場合、技術変革によって以前のフォーマットでのコンテンツが見れなくなることが頻繁にある」
ってな風に、「むしろ電子書籍のほうが危ないんじゃないの?」という指摘になってます。



もっと言うと、そういう論が交わされてるのはほーんの一部なんですよね。
大半は歴史の中に埋れていった「書物」の話やら、「本」という存在が人間や歴史に与える影響や、「本」に書かれているものと「真理」や「真実」との関係やら、「歴史」を超えて来た「本」の内容に対する評価やら…実に多彩な内容が語られています。



ま、二人とも「古書」の収集家のようですからね。「書物」という形態そのものを愛してやまない人なわけです。
よって本書の題名については確信犯的に「題名に偽りあり」なんだろうな、とw。



正直言って、二人の話に出てくる本やら作者やら歴史的事実やらの大半は、
「何のこっちゃ」
ですw。
でもその「論」の骨子については、
「なるほどね」
ということが少なくなく、全体としては(分かんない部分が少なくないにもかかわらず)割と面白く読めたなぁと。
途中は「こりゃ読み通せないかな?」って感じも「なきにしもあらず」だったんですがね。



まあ基本的に楽しそうなんですよ、二人の様子が。本当に「本」のことが好きなんでしょうね。
で、好きなことを分かり合える相手と思う存分に話し合う様子っていうのは、外から見ててもその「楽しさ」が伝わってくる、と。
本書の面白さは基本的にはココだと思います。
ま、僕自身、「本好き」ってのもあるからだろうとは思いますが。



と言うわけで、間違いなく読む人を選ぶ作品だと思います。
僕自身も「最適な読者」ってわけじゃないでしょう。(古書収集の趣味は全くないので)
でもどっかで「本」というものに淫した経験がある人ならw、興味深く読むコトが出来るんじゃないでしょうか。



歴史に残る作品かどうかは分かりませんがw。