鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「沸騰!図書館」

・沸騰!図書館 100万人が訪れた驚きのハコモノ
著者:樋渡啓祐
出版:角川oneテーマ21(Kindle版)



HONZの書評が面白かったので、電子書籍版をその場で購入。
で、ちょっと読み始めたんですが、これが面白くって!
結局、一気に読み上げてしまいました。



僕個人としては樋渡氏の政治手法については完全に賛成できないところも少なくありません。
この図書館の件についてもいくつか意見を異にしている点もありますし、懸念も感じます。
新刊の取り扱い
民間業者の継続性の課題
民間企業のブランドとビジネスプランと公共機関との距離感
・・・とかね。
武雄図書館については(樋渡氏も勿論認識していますが)ブーム後の「継続性」って点もあるでしょう。



でもここら辺は「意見の相違」の部分。
樋渡氏も言ってる通り、これはあり得ます。だからといって論議バッカリして思考停止に陥ってたら何にもならないでしょう。
そういう観点から、この図書館を巡る取り組みには賛辞を贈って良いと思います。これが「政治」です。



本書の中では図書館業界の重鎮の言葉も紹介されています。
「これは図書館じゃない」
旨の(皮肉めいた)発言もありますが、僕自身もそれに近い印象を持っています。
その上で、
「それでいいじゃん」
と言いたい。
市民に求められる施設や制度は何なのか?
この点を外してはダメでしょう。
(勿論、利便性や効率性を越えてでもやるべきこともあります。
そのことも武雄図書館は踏まえて設立/運営されている。
反対するのであれば、やはり「対案」は必要でしょう。一市民なら「対案」までは・・・というのもありますが、政治家や団体はそれでは存在意義がありません。
ここら辺が露わになるあたりが本書の意地悪さでもありますw)



勿論、「これから」が問題なのも確か。
特に樋渡氏が去った後には懸念もあります(そういう例も少なくないし)。
でも、それこそ「民主主義」が試されるところですね。
そのことを懸念して実行を控える・・・なんてのは、市民に対する侮辱でもあると思います。



まあ「考え方」も面白いんですが、何より進めて行く過程で色々と露わになってくる政治、行政、諸団体、市民活動etcの課題やらどうしようもなさやら、情けなさなんかが興味深く、思わず読み進めてしまいます。
「図書館の話」
に収まらない深みと広さがある一冊になってると思いますよ。



こういうの、近くに出来ないかなぁ。