鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「皇帝フリードリッヒ二世の生涯」

・皇帝フリードリッヒ二世の生涯<上・下>
著者:塩野七生
出版:新潮社



「世界の驚異」と言われる中世の神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒ二世の伝記。
作家としてデビューする前から、
「いつかは書きたい」
と塩野氏が考えていた人物らしいですから、「満を持して」というところでしょうか。
実際、「人物」という意味では、
チェーザレ・ボルジア
マキアベリ
ユリウス・カエサル
に続いて、「ガップリ四つ」で描ききったという感じです。



数年前まで僕自身は「フリードリッヒ二世」に関する知識はほとんどなかったんですが、出口氏がどこかで触れてたのを読んだり(その後、「仕事に効く『世界史』」でも読みました)、ヤマザキマリ氏が「男性論」で取り上げてたりしたのを読んで、気になってたところに、本作が出版されました。



ローマ法王の権力が絶大であった中世ど真ん中で、「法による支配」を掲げて制度の整備をしつつ帝国の運営をするとともに、「カエサルのものはカエサルに」とのスタンスからローマ法王と正面切って対決し、ほぼ勝ち続け、ルネッサンスに先駆けた人物



かーんたんに整理すると、フリードリッヒ二世とはこういう人物です。
その合理性やビジョンの確かさ、意志の強さと徹底した行動力、そして人物としての幅の広さと魅力。
まあ「世界の驚異」と言われるに値する人物と言えるでしょう、
そのあまりの「スゴさ」が、結局のところ、彼の死後、その一族の絶滅に繋がってしまったとさえ言えるくらい。



実は僕は本書は出版されてすぐ(2013年12月)に買って、「上巻」は結構すぐに読み終えたんですよね。
でも何となく下巻に入るのがはばかれて、ズルズルと今まで・・・。
その理由がこの「一族途絶」でした、
上り調子の「上巻」はトントン拍子で、爽快に読めるんですが、「下り坂」が見える下巻は何となく・・・。



もっともフリードリッヒ自身は「皇帝として生まれ、皇帝として死んだ」ので、彼自身は「勝ち放し」で生涯を終えたとも言えるんですけどね。(さすがに晩年には「衰退の兆し」は見えますが、彼自身はそれにも機敏かつ果敢に対処します)
その分、一気に「滅亡」に進む息子達の末路は何とも・・・。



塩野氏は本書の最後に問いかけます。
「フリードリッヒ二世は結局のところ敗者だったのか?」
一族の滅亡という点を考えれば敗者かもしれない。
しかしその後のローマ法王の権力の衰退のキッカケを作ったという点では・・・。


そして作者はフリードリッヒが愛した「鷹」によせて、こう結びます。


<飛び立っていく鷹にとっては、勝者か敗者かなどということは、関係なくなっているのではないか。生ききった、と言える人間にとって、勝者も敗者も関係なくなるのに似て>



本書はその「生ききった」一人の魅力的な男の生涯が描かれています。
読み終えてみれば「下巻」の方が読み応えのある作品w。
一読の価値は間違いなくあると思います。