鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「仕事に効く教養としての『世界史』」

・仕事に効く教養としての「世界史」
著者:出口治明
出版:祥伝社(Kindle版)



ライフネット会長が語る「歴史(世界史)談義」。
世界史を体系的に語るというよりは、いくつか興味がある視点に点いて独自の視点も交えながら語った・・・って感じでしょうか?
「トップビジネスには教養が必要」
とは良く言われることですが、
「具体的にはそれってどういうこと?」
という一つの例と言ってもいいかも。題名はあまりにも「功利的」すぎる様にも思いますがw。



作者が本書で語る「視点」はこんな感じ。(各章の表題)



「世界史から日本史だけを切り出せるだろうか」
「歴史は、なぜ中国で発達したのか」
「神は、なぜ生まれたのか。なぜ宗教はできたのか」
「中国を理解する四つの鍵」
「キリスト教とローマ教会、ローマ教皇について」
「ドイツ、フランス、イングランド」
「交易の重要性」
「中央ユーラシアを駆け抜けたトゥルクマン」
「アメリカとフランスの特異性」
「アヘン戦争」
「世界史の視点から日本を眺めてみよう」



体系的じゃないけど、カバー範囲はかなり広いですね。
学術的なところを押さえながらも、結構自由な発想も織り込んでいて、「論」としてはそれが「弱み」になってるかもしれないけど、ビジネスシーンでの「茶飲み話」としては相当レベル感が高くなっています。
ちょっとトゥルクマンの話なんかは(馴染みがないので)ついて行けないところもありましたが、なかなか面白く読めたし、感心も随分させられましたよ。



<真の保守主義には、イデオロギーがないのです。観念的な上部構造を持っている世界観と、保守主義は無縁です。人間がやってきたことで、みんなが良しとしていることを大事にして、まずいことが起こったら直していこう。それが保守の立場です。>



アメリカとフランスの特異性について語っている中で触れられる「保守主義」の解説。
あるヨーロッパ人の作者の友人はこんなことを言ってるそうです。



<「日本に保守主義は根付いていないと思う。日本で保守と言われている人たちは、ヨーロッパの基準ではクレイジー(過激派)に近いと思う。>



「教養」ってのは、こういう現実分析に力を持つものでもあります。
そういう意味で、何となく今の日本社会に感じられる反「教養主義」的な雰囲気には懸念を覚えざるを得ません。
ま、彼らから見ると、出口氏のようなスタンスが「鼻持ちならない」と感じられるってのも分からなくはないんですけどね。