鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「『やりがいのある仕事』という幻想」

・「やりがいのある仕事」という幻想
著者:森博嗣
出版:朝日新書(Kindle版)



<「元気なんか無理に出さなくても良いから、ちょっと元気のある振りをして、ちょと笑っている振りをして、嫌々でも良いから仕事をしてみたら?それで金を稼いで、あとでその金を好きなことに使えば良い。それが君の人生かも」と言ったら、身も蓋もないだろうか。>



そりゃ、身も蓋もないだろうw。



理系的な思考回路やロジックを全面に打ち出して推理小説等を発表してきた森博嗣のエッセイ。
作者の作品は出始めの頃には次々読んでたんだけど(結構なペースだった記憶がある)、最近はとんとご無沙汰。「四季」くらいまでかなぁ、おつき合いしたのは。
本作を購入したのも、例によってAmazonセールに乗せられて、ってやつで、特段「作者買い」したわけじゃない。
ないんだけど、この身も蓋もないクールな語り口に、「いやぁ、懐かしいなぁ」って気分になった。
良くも悪くもこの持ち味が「森博嗣」で、それが文系的思考や感覚が幅を利かせる推理小説分野じゃ新鮮だったんだよね。
それはエッセイでも変わらない。



<たとえそれらしい原因を見つけても、解決の方法を見いだすことはできないだろう。自分のことならなんとかなるが、相手や周囲や社会や国や経済や運や時代は、自分の努力では変えられないからだ。>
<検索できるものは、(中略)既に存在している知見だけである。しかし、自分の問題を解決する方法は、自分で考え、模索し、新たに編み出さなければならないものなのである。>



然り。
だから作者に「仕事」のことなんか相談しても無駄なんであるw。
本書の終盤には「Q&A」を擬したパートがあるけど、ココなんか読むと、そのことがよく分かる。何より、作者自身がハッキリとそう言っているw。
ただ無駄なんだけど、客観的・第三者的視点から、ロジカルに「仕事」について考察するのを一緒にたどると、
「まあ、そうだよな」
って気分になる。
そして少しだけ気分が軽くなる。
それでいいんじゃないかと思うよ。
(「やりがいのある仕事」をしてると思ってる人は別にそれはそれでイイんだけどね。ただそれが特権的なことでも正義であるわけでも偉いわけでもない・・・ってことは知っておいた方がいい。
と、作者は言っております)



それにしても、作者がもう小説家を半ば引退してるのは知らなかった。
もう一生分は稼いだんで、いまは一日一時間、執筆するだけ・・・だそうな。
こんなこと言ってるから、「相談」を受けちゃうんだよなw。