鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「永遠の0」

・永遠の0
著者:百田尚樹
出版:講談社文庫



いやぁ、泣かされました。
実に良くできた作品であり、胸に迫るモノがあります。
「270万部」?
それだけ多くの人がこのメッセージを受け取ったんだとしたら、それはそれで良いことなのではないか、と。
「風立ちぬ」も大ヒットしてるようだし、前大戦に対する興味が高まることは良いこと。
・・・なんだけど、そんな雰囲気ある?



作品としては「死にたくない」と言う零戦パイロットを主人公とすることで、開戦から終戦までを通した設定を構成し、その中で太平洋戦争の経緯、そこで繰り広げられた作戦の行方、そのなかでの日本軍の官僚エリートの愚かさ、彼らに翻弄される現場の軍人の悲劇etc etcを俯瞰する構成となっている。
真珠湾、ミッドウェイ、ガダルカナル、レイテ、インパール、沖縄etc・・・特攻だけでなく、大戦の中での日本軍の「愚行」が本書を読むとよく分かる。
「失敗の本質」の小説版・・・といった趣すら・・・w。
(それだけに実はここら辺のパートは知ってることも多かったんで、読むのがしんどかったってのもある。
正直、一回手を置きました)



百田氏自身は結構「保守的」なスタンスをとってて、そういった発言も多いようだけど、本書にはあんまりそういった趣は少ない。
元・経済界の重鎮が繰り広げる「メディア批判」「現代の道徳欠如」あたりがそこに繋がってるかな。
ここは、「そうだよな」と思いつつ、「ちょっと政治臭い」って印象もあった。戦後を過ごしてきた人物が語るとすると、もうちょっと複雑なモノがあるんじゃないかな・・・と。
いや、書かれてることは「ごもっとも」なんだけどさ。



そういう意味だと、ちょっと百田氏の政治的な言説と本作のメッセージに若干の違和感を感じたりもするんだけど、まあ作品は作品で独立したもんだからね。
本作を読んだ感動は感動として素直に受け取りましょう。
もう少し大きくなったら子供たちにも読んで欲しい作品でもあります。



年末には映画も公開。
さて、どんな出来になってるのやら・・・。