鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

「相撲」のパートは原作よりインパクトがあります。:映画評「ヤバい経済学」

iTunesやHuluには結構ドキュメンタリーがあります。(これはiTunesでレンタル)
TVはあまり観ない生活だし、ドキュメンタリー映画を観に行く機会もないので(と言うか、金沢じゃあまりやってないw)、これは有り難い。・・・なかなか観る時間はないですけどねw。




「ヤバい経済学」



本作は大ヒットした経済学のエッセイ本をネタにした映画(ポイントは「インセンティブ」にあります)。
「名前が人生に与える影響」「アメリカで犯罪が減少した原因」「生徒に報酬を与えることで成績がアップするか」等々、原作で取り上げられたネタが映像化されています。原作の二人も登場し、それぞれのネタについて解説してますから、本作へのコミットも深いんでしょうね。
さすがに原作ほどの論理性はないんだけど、それでも原作が持つエッセンスは十分に伝わってきますよ。
単純に作品として面白いし。



日本人にとって一番インパクトがあるのは相撲の「八百長」を取り上げたパートでしょう。
原作では統計をベースにして「八百長」の可能性を指摘し、「インセンティブ」からその存在を裏付けていましたが(「7勝7敗」の力士の最終日の勝率がキーになります)、映画では「虐待」問題も絡めながら相撲社会の体質、そこから透けて見える「日本社会」そのものの歪みにまでリーチしています。客観的に見ても、本作の中で最も内容の充実したパートだと思いますね。



「7勝7敗」問題については、「そういうことはあるだろうなぁ」と思いつつも、「それを『不正』をは言い切れない」って気分が僕にはありました。
まあ追いつめられた力士と、勝ち越している(あるいは負け越している)力士の気合いも違うでしょうし、そこに「仲間意識」が働くのも・・・ってとこです。
でもそこに「現金」が絡んでくるのは「う〜ん」だし、「虐待」問題は相撲社会の「建前と本音」のあり方について考えさせられるキッカケとなりました。
「建前を維持するために本音が隠蔽され、それがメンバー/組織、さらには社会の圧力に転じる」
この構図はその後色々なスポーツ団体で指摘されてくるようになっているし、日本社会そのものの風潮にも繋がってるような気がします。
そういう意味でも、なかなか「深い」パートだったと思うんですよ。



それにしても欧米のドキュメンタリー作品ってのは作品として楽しめるないようになってるのに感心します。
時間も大体一時間半と手頃な感じ。
機会を見つけて、他の作品も・・・とは思ってます。