鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「経営戦略全史」

・経営戦略全史 50 Giants of Strategy
著者:三谷宏治
出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン



出版された頃にアマゾン評を覗いてみると、沢山の「賞賛コメント」に混じって、そのコメントに対する疑念(早すぎる、短い、初投稿者ばっかりetc)を表明するコメントも少なくなかった。
その批判コメントにも一理あるような気がして、少し読むのを躊躇する感じもあったんだけど、結局コンセプトの面白さが気になって、Kindle版で購入。
読み終えての感想は、
「これはいい本じゃん」!



いや、確かに「?」ってトコもあるよ。
ラストに「補章」として作者が提唱する「B3Cフレーム」の紹介がされてるんだけど、こういう並びだと、
「数々の経営戦略の行き着く果てがこのフレーム!」
みたいな印象があって(そういう自負もあると思う)、ちょっと鼻白む。
本書では章の冒頭で取り上げる経営学者の架空対談があるんだけど、補章の対談は作者とドラッガーの対談だしね!



でもこういう風に「経営戦略」に関する歴史を俯瞰するって言うのはナカナカ読み応えがあるよ。
中身も分かりやすくて、スラスラ読めるし。
あまりこの手の勉強をしてきた方じゃないんでw、気づかされることも少なくなかった。
まあ、真面目に経営戦略に関わってきた人なんかにとっては、本書は簡単すぎるし、「浅い」のかもしれない。
「入門編としては最適」
そういう感じかな。



本書を読んで実感するのは、
「結局、経営戦略に『正解』はないんだな」
ってこと。



<皮肉屋のスーパージェネラリスト ミンツバーグによれば「すべての理論は間違っている」。それでも、「マネジャーはどれかを選ばなくてはならない」のです。>(おわりに)



「人間」や「社会」という不確実性に満ちたもの/ことを対象としている以上、「普遍的な真理/法則」のようなものを構築することは「経営」「経済」においては、「神ならぬ身」にとっては不可能。
それでも「現時点」で「判断」し、「行動」するために、「選択」をする必要がある。
「経営戦略」とはそういうものなんじゃないかな、っていうのが、僕の感覚だ。
(そのために方向性を示す「思想」と、現状の把握のための「ツール」が経営戦略にはある。
作者の「B3Cフレーム」は確かにこの「ツール」としては適用範囲の広い、良いツールかもしれないね)



<おそらく多くの日本の会社は、世界の経営戦略論的には(超)古典とされるポーターやアンドルーズ(SWOT分析)の経営戦略論に留まってます。>(おわりに)



確かに、そういう気はするw。
ただ実業はそうした理論を越えて先に進んでいるところがあって、現時点における最も重要な経営戦略的な思想「スピード感」「トライ・アンド・エラー」ってのは、日本でも多くの企業が直面し、足を踏み入れつつある領域だと思う。(その混乱期に日本家電企業の苦境などは位置づけれるんじゃないかな?)
結局のところ、「経営戦略論」ってのは、現実/実業の「後追い」の部分がある。
そうだとすれば、それは宿命的に打ち出された時から「古びている」とも言える訳だ。
「エクセレントカンパニー」や「ビジョナリーカンパニー」なんかを読むと、その想いが強くなる。



「それでも、我々は選択しなければならない」



所詮、相対的であることを宿命づけられながら、それでも前に進むために「選択」をせざるを得ない。
人間存在そのものに「経営戦略」ってのは裏打ちされているわけだ。



読みがいのある一冊でしたよ。
(入門編として・・・だけどw)