鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「ヤバい経営学」

・ヤバい経営学 世界のビジネスで行われている不都合な真実
著者:フリーク・ヴァーミューレン 訳:本木隆一郎、山形佳史
出版:東洋経済新報社



「ヤバい」シリーズ最新作・・・って訳じゃなくw、同じ出版社から出版されてるけど、作者も背景も「ヤバい経済学」とは関係ないようだ。
言ってみりゃ、「便乗商法」w。
まあでも、一般的に「常識」「常道」「王道」と思われている考え方やルール/法則に対して疑念を提示し、学問的な成果の裏付けを持って具体的にその間違い/問題点を指摘する・・・ってスタンスは基本的には同じ。そう考えから、この「題名」も悪くないかな、と。
そもそもの「ヤバい経済学」も原題とは大分ちがうしね。



とは言え、本書で指摘されている内容が「衝撃的」かと言えば、少なくとも僕にとってはちょっと違う。
人間の認識の仕組みやそこから発生するバイアスについて論じられた本は最近結構出てるけど、例えばその集大成のような「ファスト&スロー」なんかには、本書で指摘されてるような事案を想起させることが既に結構書かれている。
「ファスト&スロー」を読んだときに、「これはビジネスにも当てはまる考え方」と感じるところがあったけど、まあ言って見れば本書はその視点から描かれた作品と言えるかな?
細かく原典を当たった訳じゃないけど、多分ベースとなる論文なんかには重なりや関係が結構あるんじゃないかと思うよ。そこまで遡れば、「ヤバい経済学」との関連性も、より深くなるかもしれないな。



企業買収
ヒーロー経営者
成功の罠
相反利益
仲良し取締役会
リストラの効果
流行の経営手法
経営コンサルティング etc,etc



取り上げられる話題は広範囲にわたり、ナカナカ面白い。
「これは今の日本のビジネス現場にはちょっと合わないかなぁ」
と思うのもあるけど(社外取締役の件とか)、大半は「まあそうだよな」ってな感じかな。
まあ「経営」ってのは「人間」そのものを相手にしてるからね。
「正解」なんてのはないよ。
「今に合致し、明日に繋がる方法論は何か?」
個人的には「経営論」「経営施策」ってのはそういうもんだと思ってる。
「ルール」にするのはいいんだけど、それを「鉄則」にしちゃうと、その時点から綻びは始まる。
「最高に適応した者が最も早く滅びる」
という「恐竜」の前例を忘れちゃいけない。



本書に関しては個人的にはもう少し学問的な裏付けの部分の説明をして欲しかったかな、ってのはあるかな。
具体例は沢山出てくるんだけど、それと学問的な裏付けとの関連性があまり語られてないので、全般的にサラッとしすぎてる印象があった。「読みやすい」って言えばその通りなんだけど、ちょっと軽くなっちゃってる感じもあって、(いい内容だけに)残念な気もする。
(そこら辺は「ファスト&スロー」を読むと、結構カバーできるとも言えるけどね)



「批判ばかりで、建設的な提案が少ない」
って指摘はあり得ると思う。
「不断の組織改革の必要性」なんかも提議されてるけど、全般的には「課題指摘」の側面が強いのは確か。
しかしまあ、これはそういう本なんだよねw。
「まずは足下を見直す」
それでいいんじゃないか、と。
何かしらの「気付き」は必ずある本だと思うよ。