鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「シュレディンガーの哲学する猫」

・シュレディンガーの哲学する猫
著者:竹内薫/竹内さなみ
出版:中公文庫(Kindle版)



読み終えて、
「何だか変な感じが作品だなぁ」
という印象だったんだけど、「あとがき」を読んで納得。



<読みやすい小説部分を妹の竹内さなみが担当し、小難しい解説部分を竹内薫が担当することによりシュレ猫の「重ね合わせ」と同じ構造を狙ったのだ>



・・・なるほどね。
小説部分が「女性」目線なのに、「解説」部分が「男性」目線なんで、「うーん・・・」って感じがあったんだけど、そういう狙いがあったのか。まあ、作者も二人連記されてるし、考えてみれば・・・って、分かりにくいよ!w
正直、この「重ね合わせ」効果は上手く機能してないと思うね。
やるんだったら、小説部分と解説部分のところに、それらしき「仕掛け」を組み込んでもらわんと。「人称」が混乱してるだけの印象になっちゃうよ、これじゃ。



取り上げられている哲学者は12人。



ウィトゲンシュタイン
サルトル
ニーチェ
ソクラテス
カーソン
サン=テクジュペリ
ファイヤアーベント
廣松渉
フッサール
ハイデガー
小林秀雄
大森正藏



自分の師匠筋の「大森正藏」をラストに持ってきたり、「サン=テクジュペリ」「カーソン」あたりがチョイスされてたり、「哲学入門書」としては「?」ってとこもあるけどw、作者(たち)の問題意識からはこういうラインになるんだろうね。
それはそれでOK。
ただ「解説」部分が「入門書」としてはチョット難しすぎないか?まあ僕の理解力の問題かもしれんが・・・。
哲学者の「言葉」を列挙してるあたりなんか、「コレを解説しろよ!」って気分になったよ。
小説部分がそのカバーをしてるとこもあるんだけど、今ひとつその連携も機能しきってないとこもあって・・・結果的にはフラストレーションの残る内容だった。
作品的にはもう少し構成に手を入れた方が良いと思うなぁ。



とは言え、今更改めて個々の哲学者の作品を読むってのもシンドイから(もう40台も後半だしね)、そういう時に昔の読書経験を思い返すという意味では割と役に立つ本かもしれない。
前提知識なしに全くの「入門書」としてはちょっとハードル高いんじゃないかな?