鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「レッスン」

・レッスン
著者:五木寛之
出版:幻冬舎



Amazonで特集をしてて、ふと買ってみたんだけど、思い返してみれば五木寛之の小説を読むのは30年ぶりくらいかも。10代の終わりに、ちょっと凝った時期があるんだけど、その後は何だか食指が動かなかったんだよなぁ。
ヒットしたエッセイは割と読んでるんだけどね。



「年上の女性にレッスンを受けて、大人の男になる」



ありがちな物語と言えばありがちな物語。
ミステリアスな年上の女性がヨーロッパに繋がるあたりも、今となっては新奇な設定じゃないだろう。(本書が発表された頃がどうだったかは分からんけど)
ドクターKの「原罪」は捻りが効いてるけど、ヒロインが説明口調で語って聞かせるってのは、「もうちょっと」って印象だなぁ。



個人的にはもっと「レッスン」に具体性を持たせて欲しかったな、と。
出会いのシーンの「車」を巡るアレコレが面白いだけに、実際にレッスンが始まると、全般に概念的な話になっちゃうのが残念。
あんまり具体的なトコロに入っちゃうと、時代に風化するってのはあるかもしれないけど、伊丹十三のエッセイが時代を超えた魅力を持ってるように、そこにはそれなりの「サムシング・エルス」があると思うんだよね。
いい加減、オッさんになった今の自分から見ると、ヒロインの魅力はちょっとピンと来ないとこがあった。



まあ文章は読みやすいし、登場人物は魅力的で、配置も面白い。物語の展開もテーマを上手く捉えてると思うよ。
でも五木寛之の最良の作品…とは言えんでしょうな、残念ながら。
20代くらいで読むのがちょうどいい作品って感じやね。