鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録:「ワイドレンズ」

・ワイドレンズ イノベーションを成功に導くエコシステム戦略
著者:ロン・アドナー 監訳:清水勝彦
出版:東洋経済新報社(Kindle版)



Kindleストアのビジネス書欄を眺めてて、ふと目について購入した作品。
電子書籍もだいぶラインナップが揃ってきたけど、相変わらず玉石混交。特にビジネス書はそうなんだけど、翻訳ものには一定レベルをクリアしてるのが多いので、そういう視点でチョイスした。



しかし思ってた以上に興味深い内容だったなぁ。
色々なビジネスの例を分析して、そこから類型を導き出すスタイルの作品だから、「新機軸」ではないんだけど、漠然と感じてたこと、理解はしてるけど、フレームワークにまでは落とし込めてないことを整理して提示してくれた感じだ。



・何故、日本の家電業界は苦境に陥り、Appleは急速に今のポジションを確保することができたのか?
・電気自動車の普及においては何がボトルネックとなっているのか?



そんなことに疑問や意見を持ってる人は興味深く読める本だと思うよ。



僕が身を置いてる業界も、「パートナーシップ」が不可欠な業界。
そういう中で新しいビジネスモデルを展開するためにはどういうトコロを注意すればいいか。
様々な要素が絡みつつ、環境や技術の変化が激しい中で、どのようにタイミングを掴むべきか。
本書の中には「新しいビジネスモデル」のネタはないんだけど、「新しいビジネスモデル」を展開するために検討すべきポイントは明示されている。
「 コーイノベーション・リスク」
「 アダプションチェーン・リスク」
って概念も、言われりゃそうなんだけど、こういう風に整理されるとスッキリ頭に入ってくる。



もっともこういうところは既に日本企業も理解しており、例えばソニーなんかの家電業界もその方向に舵を切っている。
謳歌したAppleも、ジョブズの死後のMAP騒動を考えると、本書で指摘してるようなポイントを組織として何処まで理解していたのか、疑問に思わざるを得ない。



そこに「可能性」があり、「ハードル」もあるってことかなぁ。
でもこういう言語化・整理をすることで、一種アーティスティックとさえ見えたジョブズの手捌きに「論理」が見えるようになった気はするよ。
それでも簡単な話じゃないのは当然だけどね。