鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「日本が世界一『貧しい』国である件について」

・日本が世界一「貧しい」国である件について」
著者:谷本真由美
出版:祥伝社(Kindle版)



「ノマドと社畜」が結構面白かったので、同じ作者の作品を購入。
Twitterやブログから出てきた作者だけど、今後こういう形で世に出てくる人ってのは、電子書籍で出版へのハードルが低くなっただけに増えてくるのかもしれないなぁ。
まあ新しい人材が出てくるのは楽しみなことだけど、選択肢が増えすぎるってのも善し悪しが・・・。
そういう観点からも、キュレーターってのは今後重要なポジションになるかもね。
ま、本については昔から「書評」って分野があるんだけどさw。



本書については作者自身がさいごに「まとめ」をしている。
1 働き方を変える
2 自分のこととして考え行動する
3 多様性を受け入れる
前作と本作には重なるところも多いけど、前作は「1」に比重の大きい作品だった。本作はそこから少し視野を広げて、「日本論」的なところにまで言及した内容になっている。



まあ、「日本はダメだ」って論調は昔からあったし、「日本は素晴らしい」って論も結構根強い、
「美しい国」を標榜する安倍総理が「復活」したことからも、今は「日本礼賛」の作品が目につくような気がするけど、ほんの少し前は(「失われた20年」を背景に)「日本ダメ論」が主流だったかな。
他国と比較して自国のことを「どーこー」言うのは日本出版業界の「お家芸」みたいなもんってことかもw。
それはそれで意義のあることではあると思うけど、「だから?」って気持ちもないではないね。(ここら辺は村上龍氏のここ20年くらいの言説がよく表していると思う)

本書は最近の「日本は素晴らしい」論の盛り上がりを前にして、「日本には問題が多いよ」という視点を打ち出した作品。
「貧しい」ってのは経済的なことじゃなくて、「幸福感」を中心とした「精神的」なこと。
こんなこと、ホントに20年以上前から言われてるんだけど、「20年も前から言われてて、なんでそれがかわらないのか」ってのが本書のスタンスになる。
言われてみれば、ホント、その通りです(笑)。



書かれてることについては、結構賛同できたかな。
「学級会」やら学校の「掃除」の話には個人的には賛同しきれないものはあるし(規律を社会にどうやって根付かせるかってのは重要な視点だと思ってるので)、電車が時刻通り来ないってのは困りモンだと思うけどw、その根本にあるマインドセットが「モンスターペアレンツ」や「過剰な要求をする消費者」を生んでしまっているというのも事実だろう。
その果てが「ガラケー」やら日本家電業界の危機、更にはブラック企業の横行に繋がっているとするなら、やっぱり考えなきゃいけないことは多い。
個人的にはやっぱり「空気」かなぁ。
この閉塞感は強いし、その陰に何らかの既得権益の腐敗が隠蔽されてる印象は個人的に強い。
自民党政権はそれを助長しそうなとことがあって、そこが心配なんだよね。(今の政策の方向性には賛同してるんだけど)



今後の社会を考える上で本書が画期的な視点を提示してくれてる訳でもないし、社会構造全体をカバーしている訳でもない。でもこういう「外部」の視点は重要だろう。その意味で一読の価値はあったかと。
なかなか面白い作者です。
「皮肉のすくない『ちきりん』」・・・てのが個人的印象ですが、いかがなもんでしょうw。