鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「シシド」「シシド 完結編」

・シシド 小説・日活撮影所
著者:宍戸錠
出版:角川文庫(Kindle版)



・シシド 完結編 小説・日活撮影所
著者:宍戸錠
出版:角川書店(Kindle版)



戦後の日活撮影所の盛衰を、「宍戸錠」の青春譚と重ねて語る小説。
日活ニューフェイス第一期生であり、個性は脇役から「ダイヤモンドライン」の一角を担うスターにまで成長し、日活がロマンポルの路線に移行するまでを支えた作者にこそ、この物語を語る資格があるだろう。



・・・なんだけど、個人的には納得しきれないところもあったなぁ。
まあ一番の理由は「同時代性」かな?
多分、日活の隆盛期をともに過ごし、テレビに押されて急速に衰退した時期を知っている人にとっては、これはかなり面白く読めるんじゃないかと思う。

61、2年の最盛期からの急速な凋落
あるいは石原裕次郎の輝かしき登場と圧倒的なスター性
赤木圭一郎の流星のごとき一生・・・

こういうのって、確かに記述されてるんだけど、「知ってる」ってことが前提にもなってるんだよね。僕自身、知識としては知ってるんだけど、そこには「実感」がない。ないだけに、その分、本書のリアリティを感じきれないところがあるんだよね。
まあ僕のために書かれた物語じゃないんだ・・・と言っちゃえばそれまでなんだけど。
(せめて日活撮影所の歴史のところはもうちょっと「史実」を分厚く書いて欲しかったなってのはある。
結構、面白そうなんだけどね)



「完結篇」の方では、途中から製作された映画の題名と出演者/監督なんかが羅列されるところが多くなって、
「おいおい、手抜きかいな?」
って感じもあったけど、読み進めると、そこにこそ「日活」の凋落が読み取れるってのが分かってきて、面白くなった。
「やくざ」路線がドンドン増えてきて、そこにエロギャグ路線が絡んでくるという、緩い展開・・・。
「ロマンポルノ」にその先で行き着くのも何となく分かるんだよなぁ。



まあ作品としての完成度は「?」かもしれない。
でも同時代人にとっては懐かしく、面白く、興味深い作品なんじゃないか、と。
遅れてきた日活アクションファンにとっては「なるほどな〜」ってとこかな。
歴史の証言としての価値は何とも言えませんw。



(惜しいのは写真の掲載がなかったこと。
少なくともポスターはバンバン掲載して欲しかったなぁ。
これってKindle版だけなのかね?
電子書籍こそ、こういうのに向くと思うんだけど、如何なもんでしょう?)