鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「ラジオのこちら側で」

・ラジオのこちら側で
著者:ピーター・バラカン
出版:岩波新書



<八〇年代のイギリスのロックで人気のあったザ・スミスやニュー・オーダーといったバンドは、面白い映像のものが一〜二曲あったので番組で紹介しました。放送がきっかけで、ザ・スミスが一番好きなバンドになったと、教えてくれた人もいました。(中略)視聴者が好きな音楽、好きなミュージシャンと出会えたのですから、それはすばらしいことだと思いますが、紹介するぼくの方がとくに情熱をもっているわけではない場合もあり、それはいちいち番組の中では言わないわけです。一度か二度、「これはちょっと・・・」と感想を付け加えると、あっという間に、「毒舌家」のレッテルが貼られました。>(P.62-63)



いやいや、僕も「ポッパーズ」でザ・スミスを知りましたがなw。この書きぶりだと、バラカン氏はさほど評価はしてなかったという・・・。
あと「YMO」との距離感とか、僕がズッと思ってたピーター・バラカンに関する基礎知識」が随分と修正させられたような気がする。
考えて見たら、バラカン氏の番組で熱心に見てたのは「ポッパーズMTV」くらいしかないから、当然かも知れんがね。



本書はラジオとの関係を中心にバラカン氏の経歴を振り返った作品。
音楽関係者だからラジオとの関係が深いのは当然だけど、ここまでラジオDJとして自分を規定してるのはチョット意外だった。
だって英国人だからねw。
「ラジオ」と言う言葉の世界だとハンディキャップあるじゃん。



でもコレって日本のAMラジオの印象なんだよね。
コレがFMだともっと音楽が全面に出て来るし、英国のラジオ事情を踏まえてバラカン氏が目指すFM番組のあり方だと、喋りより重要なのは「選曲」。
そう考えればバラカン氏の立ち位置も理解出来る。
「ポッパーズ」の特異なポジションもね。



本書にはバラカン氏が選ぶ50曲が解説さててるんだけど、今回読み終えてから、自分のiTunesやiTunesStoreから選んでプレイリストを作ってみた(4、5曲は見つけられなかった。10曲くらいは持ってたけどね)。
改めて聞いてみると、思った以上にブラック、ブルーズ寄り、ワールドミュージック寄り。
まあバリエーションはあるけど、確かに「ポッパーズ」の印象とは少し違うかもね。
存外僕自身の嗜好には重なる感じもあるんだけどさ。



「ポッパーズ」で僕が聞くようになったと認識してるのは、TheSmithの他に「レナード・コーエン」があるんだけど、彼のことはバラカン氏はどう評価してんのかなぁ。
50曲の中には含まれてないんだけど…。
訊ねてみたいような、怖いようなw。



日本の著作権に対する問題意識にも触れられていて、ナカナカ奥も深いとこもある。
確かにストリーミングなんかで一定期間、紹介された曲を聴けるような仕組みを作ることは、今後絶対に必要なことだと思うね。
ユーザーにとってもミュージシャンにとっても、ラジオ局・スポンサーにとってもプラスこそあれ、マイナスはないと思うんだけどなぁ。
ここら辺のことを考えると、日本の既得権益の訳のわかんなさに苛立ちを感じます。
それも何時迄もじゃない…とは思ってるんだけどねぇ。



意外にしぶとく、この曖昧な日本で頑張って来た「ピーター・バラカン」と言う人間を知る上で、面白い一冊です。
プレイリストだけでも価値ありでっせw。