鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「日本流ファシズムのススメ。」

・日本流ファシズムのススメ。 日本はどこへ向かうべきか?
著者:田原総一朗、佐藤優、宮台真司
出版:エンジン01選書(電子書籍)



kinoppyのリストを眺めてて見つけて、面子の面白さにポチッと購入。
「民主党政権の限界が露呈し、オバマが二期目に入ったタイミングで、面白そうじゃん」
と思ったんだけど…。
これって09年の発行なんだよねw。
オバマ当選直後、民主党への政権交代の前のタイミング。
電子書籍化が進んで行く中、こう言うコトもあるんだよねぇ。注意せんと。



でもその割には本書で論じられる内容は、今のタイミングでも十分に傾聴に値する内容だと思う。
(それだけ第一期のオバマ政権や民主党が政治を停滞させたっていうことはあるのかもしれないけど、逆に言うとそれだけ問題が大きいという事でもあるだろう。
単なる政策や施策だけではなく、倫理性や哲学・文化にまで踏み込んだ内容になるだけに、取り組むべき課題は多岐に渡り、個々は深いからねぇ。
オバマも民主党も、この優先順位付に苦労し、足元をすくわれたともいえると思う。)



本書で語られる「ファシズム」というのは、財政の余力がなくなる中、小さな政府を志向しながらそれを補完する存在として社会を広く、深くして行くことで国民生活のセイフティネットを充実させるという点にある。
論者たちはこれを(ヒトラーと区別して)いわゆる「ムソリーニ的ファシズム」あるいは「アジア主義」と言ってるんだけど、「ファシズム」を持ち出すのは知識人の偽悪的な雰囲気もあってチョット鼻白らむトコはある。
まあでも方向性は理解できなくもないかね。



一方で日本においてこういう方向性が進むと、同調圧力が強い社会だけに何となく個人としての存在が抑圧されて行くような気配がしなくもない。(大阪の体罰の話なんかもなぁ…)
ただ、「無い袖は振れない」ってのも確かだからね。
過去の反省を振り返りつつ、公と私のバランスを取りつつ、前に進めるしかないいうのが現実なとこなのかもしれない。



本書で論者たちは民主党に対する期待を語っている。
しかしそれは3年間の政権運営で失望に代わった。
その現実を踏まえつつどのように進めていくべきなのか。
その点を、改めてこの論者たちに聞きたい。そんな気分にもさせられる1冊であった。