鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「知らないと恥をかく世界の大問題」

・知らないと恥をかく世界の大問題<1><2><3>
著者:池上彰
出版:角川SSC新書(Kindle版)




衆院選の選挙速報番組での池上彰氏の司会っぷりは見事だったようだね。
僕は見てないんだけど、まとめサイトなどで拝見した歯に衣着せぬ質問っぷりは感服した。
その後、どこかの記事で、「ジャーナリストとしては当然のこと」みたいなことを言ってて、尚更その意を強くした。
池上氏の「黒」っぷりは以前から何度か話題になってたけど、今回のことで決定的になった感じがあるなぁ。個人的には「ニュースのおとうさん」の印象は払拭されたよ。



本書はちきりん氏が「Kindleで読むのにおすすめ」としてブログで紹介してたのを読んで、まとめ買いしたもの。
池上氏の作品は、確か震災直後の緊急出版作を読んだ覚えはあるんだけど、あんまり読んでなかったんだよね。「子供向けニュース解説」の印象が強かったし。
でも考えてみれば、僕自身が世界情勢に造詣が深いって訳でもないしw、「ジャーナリスト」としての池上氏を見直したこのタイミングで、知識の整理のために・・・とも思って読んでみることにした訳だ。
読み終えてみれば、「知識の整理」どころじゃなかったけどねw。



それぞれの出版は「1」が「2010年12月」、「2」が「2011年3月」、「3」が「2012年6月」ということになる。
民主党政権成立後にシリーズがスタートし、「1」「2」が震災前、「3」の出版以降にオバマ再選と自民党への政権交代が行われている。
ざくーっと言えば、日本の民主党政権、アメリカのオバマ1期目の期間をカバーしてるって感じだね。
別に意図した訳じゃないけど、それはそれで一区切りになってるともいえるかな?(同時に中国の台頭の時期にも重なってるね)



「1」「2」「3」を続けて読むと、池上氏が民主党やオバマに少なからず期待を寄せ、それが少しずつ現実の流れの中で裏切られて行くことへの失望に変わる経過を見ることが出来る。
(まがりなりにも政策的な成果に向けて進んだオバマ政権に比べ)特に「民主党」への失望感は深い(ま、当たり前だが)。それだけに鳩山政権の失敗を整理したあたりの論は、ナカナカ参考になる。
政権発足時の「政策」に対して結構高い評価を与えてるだけに、忸怩たる思いがあったんだろうね。
結局のところ、「政権運営に慣れてなかった」ってことなんだろうけど、実に代償の高い授業料を払ったものだ。もっともそのことを安倍政権も認識しているらしく、まったく無駄な経験だったとも日本にとっては言わずにすみそうではあるが・・・(今のところはね)。



(個人的には民主党の失敗は、小沢グループを政権中枢から外した時点で、選挙に打って出、世間に訴えなかった点にあると思う。あの時点で政権交代時の「理念」「政策」は断念してたんだからね。
「そんなことしてたら議席を大きく減らしてた」
ってことだろうけど、今ほどのことはないだろう。
少なくともそういう契機があれば「政策論争」がなされ、政策による再編の可能性もあった。
現時点だと、結局民主党は何だか訳の分かんない存在になってて、結局「自民党」に吸収されるような印象すらある。
ま、所詮、そういう人物しか残ってないってことなのかもしれんがね)



本シリーズは、とにかく分かりやすく世界情勢/日本の現状を解説してくれている。
「簡略化し過ぎじゃない?」
って部分も勿論あるんだけど、そのことによって全体の「絵図」が見えてくるってのもあるからね。少なくともグローバルな世界の動きを見るのに、これほどクレバーな解説を僕は読んだことがない。
まあ、子供にも分かるように説明するってのはかなり難しいからねぇ。
大人に分かるように解説するくらいは、池上氏にとってはお手の物だったのかもw。



色々著作があるから、「どれを選んでいいやら」ってのはあるけど、本シリーズは視野の広さから言ってもオススメなんじゃないかと思います。
少なくとも、僕は大変参考になったよ。