鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「冷たい校舎の時は止まる」

・冷たい校舎の時は止まる<上・下>
著者:辻村深月
出版:講談社文庫(Kindle版)



「鍵のない夢を見る」で直木賞を受賞した辻村深月のデビュー作。
評判は前々から聞いていて、読もうかどうか、踏ん切りがつかないうちに直木賞作家になっとった…って感じだねw。
Kindle版が出てるのを帰省前に見つけて、年末年始の「お楽しみ」に購入した。



正直、前半は乗り切れなかったなぁ。
ホラー的というか、ファンタジー的というか、一時期の新本格派的というか、「人工的」な設定にイマイチ乗り切れんかったんだよね。
(これを「面白い」と言う向きもあるだろうけどねぇ)



加えてドップリ「青春小説」風の内容も、40過ぎのオッサンにとってはチョット気恥ずかしい。
処女作で、大学在学中に書き上げた作品らしいから仕方ないんだけど、高校生活に集約されたような価値観を前にすると、頭を掻きたくなっちゃうんだよなぁw。
(その年代にとってそれが大切なのは分かるんだけど)



ただ後半に入って、設定の深みが見えてきたあたりでは、かなり惹き込まれた。
特に不良少年の「過去」にはやられたよ。作品における位置づけとしても悪くない構成だと思う。
そこからラストまでは一気に読まされた印象が強い。



気になるとこも少なくないけどね。
特に登場人物のバランスは良くないと思う。
設定的に視点を一人に定められないのは仕方ないけど、後半の展開を考えるともう少し整理をした方がいいんじゃないかなぁ。途中、新本格派風の「読者への挑戦」的な部分があるけど、その割には「探偵」による種明かしがスッキリしないのは、もうチョイ工夫の余地があったんじゃないか、と。
長くなった分、そこに編集の余地があったんじゃないかってのが正直な感想だ。



まあでも、そうするとこの作品の持つ雰囲気が損なわれたかもしれないから、難しいトコではあるかもね。
その後、直木賞まで獲ってるんだから、職業作家として確かな腕を持ってるのは間違いないんだし。
ラストシーンは僕はかなり気に入ってるので、本作の評価はそれで十分ってことかな?



まあしかし、年末年始に読む本としては「どうかな?」って感じはありましたなw。