鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「BEソーシャル!」

・BEソーシャル! 社員と顧客に愛される5つのシフト
著者:斉藤徹
出版:日本経済新聞出版社



「ソーシャル・シフト」の作者の新作。
前作ではSNS等のソーシャルメディアのビジネス活用について具体的に語っていたんだけど、本作では一歩進んでSNS等が拓いた新しい「ビジネスのあり方」について論じている。
まあ僕なりにまとめてみると、



「ソーシャルメディアは、それまで組織と内外にあった『情報格差』を縮小してしまう。
それは組織内部にも及んできることから、情報格差に支えられる中央集権的な組織構成/運営は、情報の流動性が激しい環境に対応しきれず齟齬を来すケースが増えてくる。
これに対応するためには組織内外の情報を極力『透明化』することで、組織に所属するメンバーが組織の理念/目標を自らと同一化し、指示を待つのではなく、自分自身で考え、行動するようになる必要がある。
そのためには企業自身が社員/顧客/事業パートナー/地域等との『絆』を重視する『企業のあり方』を築き上げ、その理念を体現しなければならない。
老舗企業が多く、持続的な経営スタイルを取る企業が多く存在する日本には、そうした『企業のあり方』に対する親和性が高く、その意味で、こうした『透明な力』を活用した企業スタイルの時代を牽引できる可能性があると考えられる」



って感じかな?
力点の置き方は違ってるかもしれないけど(前作もそうだけど、作者は結構具体的に『やり方』『進め方』についても論じてくれている。そこら辺はチョット僕の興味とはズレるところがあるんだよね)、僕自身はこういう形で本書を受け止め、刺激も受けた。
具体的な事例も多く紹介されていて、リアリティもあるしね。
こういう企業統治のあり方は中小規模の企業の方が対応力はあると思うけど、ちゃんとグローバルな大企業の例にも目配りしてて、バランスは取れてるよ。
(もっとも大半の企業のことは「どこかで聞いたことがある」って感じもあったけどw。
これは僕自身の興味の方向性が作者に近いところがあって、本やネットなんかの情報で同じようなところをカバーしてたってことかもしれない)



結果に対する目標値から施策をブレイクダウンするアプローチである「アウトサイドイン」から、「真摯で誠実な企業姿勢を基礎とし、持続的に社会に貢献すること。そのために、共通の使命や価値観を共有し、オープンな組織と情報共有で社員の自律的行動を促し、社会に貢献するビジネスモデルを構築し、顧客の事前期待を上回る価値を創造する」(第8章)という「インサイドアウト」のアプローチへの移行は、確かに今の「時代」を反映した考え方かなぁと思った。
第9章あたりで紹介されているHCLTや、W.L.ゴアのような、極めてフラットで民主的な企業スタイルが、果たして自分の所属する組織にもありえるのかってのは疑問っちゃあ、疑問だけどね。
「日本」に果たしてこういう「あり方」を牽引する土壌があるのかどうかについても何とも言えないところはあるけど、ある種の理想ではあるし、そういう方向性が語られる時代でもあるかな、とも感じている。
正直なところ、もう少し理念と具体的アプローチは整理した方がいいかなと読みながら思ったりもしたんだけど、なかなか考えさせられるところのある作品だったとは思うよ。



(ちなみに僕はこの作品をKindle paperwhite、iPhone5、iPadで読んだんだけど、文字の読みやすさはKindleはいいんだけど、図版とか表のについては拡大が上手く出来なくて、ピンチアウトして拡大できるiPhone/iPadには一歩二歩譲る感想だった。
時代性に強く影響されるビジネス書は電子書籍向きと思ってるんだけど、少なくとも端末的にはKindle paperwhiteは向いてないね。
ま、ここら辺は今後の電子書籍の制作スキルが成熟する中で変わってくるところなのかもしれないけどさ)