鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「64」

・64
著者:横山秀夫
出版:文藝春秋(Kindle版)



7年ぶりだかの横山秀夫の新作。
本書の執筆中に大スランプになって、一時はうつ病・記憶喪失状態という酷い状況だったらしいけど、その苦境を乗り越えての新作発表。
「力作」なのは間違いないよ。



「陰の季節」に始まるD県警シリーズの長編作で、「陰の季節」主人公・二渡を始め、シリーズの登場人物がソコソコに顔を出す。
横山作品に特徴的な「組織と個人の尊厳」と言うテーマを展開しつつ、そこに「父と娘」や「夫婦」と言ったテーマを重ねることで、重厚な物語を織りなす内容となっている。
横山作品が好きな人には堪らないでしょうなw。(僕自身はそこまででもないんだけど、一気に読まされたのは確か)



もっとも作品としての「完成度」という点では留保がつく作品かもしれないなぁ。
主人公が「広報室」という自ら望まなかった職場に対して誇りを持つようになり、部下たちとの連帯を強くするシーンは胸が熱くなるんだけど、これが中盤に置かれてるのはどうかなって印象がある。
以降のストーリー展開にも胸つかれるところはあるんだけど(娘を持つ身には特に!)、完成度という点だけど考えれば、盛り上がりを分断してしまい、ストーリー散漫にしてしまったと言う指摘もできなくはないだろう。
終盤の展開への入り鼻は、「こっから、まだ何が…」って思っちゃったのは事実です。
(だからってどうしたら良かったかとは言えないんだけどさw)



でもまあ、コレだけ楽しませてもらったんだから、文句言っちゃいかんわねw。
組織人(サラリーマン)で、娘を持つ僕にとっては、「参ったなぁ」って展開がソコココにあります。
主人公と娘の関係には「うーん…」って感じ。
無言電話の意味には…(自粛)。
妻にもオススメはしてるんだけど、感想は全く違うかもしれないね

そう言う作品です。