「天地明察」が面白かったので、作者の時代小説第二弾に挑戦してみた。
まあ値段的にはハードカバーと同じなんで(Kindle版では3分冊されているが)「どうかな」とも思ったんだけど、スペースのことを考えて、思い切りました。
前作は妻も楽しんだようだけど、Kindleなら妻のiPod touchでも読めるはずだからね。(ここら辺の共有の仕方は、今後ちょっと考えておく必要があるかもしれないけど)
結論から言えば「面白かった」。
メジャー級の登場人物が次々出てくる分、前作より派手だったしね。
ただ物語的な濃密感は前作の方があったかも。
「義(大義)」を巡る物語だというのは分かるし、ラストの幕末の思想風景まで俯瞰するような展開は見事とも思う。
「黄門様」が、こんなに個人として偉大であったって「驚き」も本書を読む楽しみだろう。
でもやっぱり中核にある「義」という概念は、何だか作りモノっぽく感じちゃうんだよねぇ。
まあ(前作のテーマである)「暦」だってある種の概念ではあるんだけど、その向こうには「天体」があり、「天体観測」と言う「行動」がその下支えとしてはシッカリとある。
光圀が追い求める「義」の抽象性とはやっぱ違うんだよなぁ。
そこが根本のところ引っ掛かり、結局最後まで払拭できなかった。
その「義」が幕末において「流血」を呼ぶことも理解はしてるんだけど…。
作者の時代小説におけるテーマは「人のつながり」「志を受け継ぐ」ってところなのかな、ってのが二作読んでの感想。
これが実に良く描かれており、それは「史書」という本書のもう一つのテーマにも重なっているんだよね。
そういう意味じゃ、本作自体が実に概念的な構成を持っているとも言える。
読んでて熱くなるトコも多い話なんだけどさ。
(こういうところがSF作家としての作者の資質につながるのかも。
ま、SF作品はまだ読んだことないんだけどw)
前作を読んだ時、出番が少ないながらも印象的だったのが、この「光圀」。
となると、次作は本作で印象的な登場をした「宮本武蔵」「保科正之」あたり…?
何てことを考えるってことは、次作への期待があるってことだねw。
ま、それに相応しい出来であり、面白さだったのは間違いないと思うよ。