鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

僕の中にいる彼女:映画評「転校生 さよならあなた」

「転校生」は僕にとって「特別な映画」です。
「夏の日々」を閉じ込めたようなあの映画の中に、僕は「僕自身の夏」(それは多分に幻想でもあるのだけど)を重ね見続けているようなところがある。
それだけに、大林監督自らのリメイクであっても、この作品を観る気にはなりませんでした。
当時の大林監督のスタンスには「?」でもありましたしw。



それが「この空の花 長岡花火物語」の評判を聞き、大林監督自身が登場したラジオ番組(ウィークエンドシャッフル)のPodcastを聴いて、思い直して、観てみることにした次第。
不安は不安だったんですけどねw。




「転校生 さよならあなた」



前半は前作をなぞるような展開。
季節は「夏」から「秋」に、舞台は「尾道」から「信州」に移ったけど、入れ替わる前のキャラと、入れ替わった後のキャラに齟齬があることも含めw、(当たり前かもしれないけど)基本的なストーリーラインには変更がなく、物語は進みます。
ただまあ、普通にリメイクする訳がないですわな。大林宣彦が。



後半になると前作とは全く違う設定が主人公達に降り掛かります。
そのことで後半のメインである二人の「道行き」が、正に「道行き」としての意味を付与されることになり、「さよならあなた」という「台詞」の重みが深まって来ます。
作者自身の「リメイク」の意義があるとしたら、この後半の設定変更こそにあるのは間違いないでしょう。



まあそれは分かるんですが、個人的には「うーん・・・」でしたね。
確かにテーマに深まりはあるかもしれませんが、逆に言えば「直接的すぎる」とも思うんですよ。
前作では「少年/少女時代への別れ」として描かれたいたものが、より敷衍的な「別れ=死」になるわけですが、そのことは前作でも隠喩として重ねられていたのであり、それが直接的に描かれることの善し悪しはあるでしょう。
ラストの「斉藤一実」の笑顔は、前作では「決定的な別れのスナップ」であり、斉藤一夫にとっても、おそらくは斉藤一実自身にとっても「永遠の一瞬」となったものが、本作では物語としての「別れ」が決定的でありながらも、映画的には衝撃度を減ずる結果となっています。
「別れ」に対する切なさは、僕は前作の方に強く感じますね。



とは言え、前作に決定的な影響を与えられた僕に取って、本作を客観的に見ることは、最早出来ないってのも事実w。
もしかしたら前作を観ずに本作に接した観客は、かつて僕が受けたのと同じように、本作に強い影響を受けるのかもしれません。
こればっかりは、僕には何とも言えません。



まあでも前作を観た者としても本作は楽しめる作品だったのは確かです。
少なくとも、相変わらず大林宣彦が「変」なのは確認できましたw。



久しぶりに「転校生」が観たくなったなぁ。
あの「夏」は、今も僕を迎えてくれるでしょうか?