鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「経営学を『使える武器』にする」

・経営学を「使える武器」にする
著者:高山信彦
出版:新潮社



東レ、みずほ、JR西日本などで役員/社員研修を請け負ってきたコンサルタントが、「経営学」を使った自らの研修内容について解説した作品。
前半に「理論」的な部分を論じ、後半はツネイシホールディング(常石造船)で行った研修を具体的にフォローする形で、研修の具体的な中身に踏み込んでいる。
この後半部分の具体性と生々しさが本書の読みどころかな?



<では、私の研修の「What」は何なのでしょうか。結論を言うと、戦略・論理(ロジック)と組織・人間・思い(パッション)のアンビバレンツ(二律背反)を乗り越えるということだと思っています。>(P.160)



作者の理論的な柱はマイケル・ポーターの「競争優位の戦略」。
この古典の有効性を論じながら、一方で作者はそれを万能だとは思っておらず、そこに血肉を付ける生徒達の「思い」にも重きを置いている。
その「思い」を支えるのが「顧客の声」(VOC)だって言うのが、現代的とも言えるかな?
換言すれば、「経営理論と現場主義の融合」。
作者が目指し、生徒に求めているのはコレかもしれない。



「理屈と軟膏はどこにでもつく」
という言葉があるように、ある意味「理論」って言うのは「後付け」が可能なもの。
勿論、ポーターの理論がそんな薄っぺらなモノでないのは承知しているが、それを論じる者が「理屈」に溺れちゃう可能性ってのは避けがたくある。
作者が研修の場でVOCを強調するのは、この陥穽を避けるためなんじゃないかね。



見方によっては「暑苦しい」面もあるけど、今はこういう路線にリアリティがあるんだろうなとも思う。
「経営」と「現場」の距離が近い(「現場」の人間が「経営」のポジションに「昇格」する)日本の企業組織にはマッチする感じもするし。
ただ逆に言えば、ココから「経営のプロ」が生まれてくるって言うのとも違う印象はあるけどね。
その善し悪しは何とも言えないけど・・・。



読んで元気が出る本ではあるかな。
なかなか面白かったです。