鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「ゴロツキはいつも食卓を襲う」

・ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50
著者:福田里香
出版:太田出版



「ウイークエンド・シャッフル」で取り上げられて知られるようになった(ってほどでもないか?w)「フード理論」に関する作品。
映画や、漫画、アニメなんかに出てくる「食」のシーンについて考察した作品・・・と言うと何か高尚な感じがするが、まあ映画なんかに出てくる「食事」のシーンに対して、あーだこーだと理屈をつける・・・って感じかなw。
それが結構的を射てる感じがするところが、この「フード理論」のスゴいところだろう。



「フード理論」そのものは実にシンプルだ。



1.善人は、フードをおいしそうに食べる
2.正体不明者は、フードを食べない
3.悪人は、フードを粗末に扱う



「はあ?」



でもこれが以外に当たってるんだよねぇw。
まあ「映画」「漫画」「アニメ」なんて言うのは、(小説のような心理描写や叙述がないため)画面を見て、観客に理解をしてもらう必要がある。
そのため表現としては「最大公約数」的な描写を多く使わざるを得ない・・・っていうのがあるからね。
その制約から導きだされたのが、この「フード理論」・・・と言ってもいいんじゃないかと思う。



本書は言ってみればその「最大公約数的描写」を「ステレオタイプフード」と定義して、公約数化(標準化)されたエッセンスのようなものを論じている・・・ってとこかな?
そのため描写そのものは具体的だけど、じゃあそれがどこで使われたのか・・・と問われると、ピンポイントでの答えはナカナカ見つからない。
本書でも、「実例」として上げているのはわずか。
「宮崎駿」に関する一章が例外的なくらいだろう。



うーん、このスタンスは分かる。
そもそも具体から抽象化されたようなものが「ステレオタイプフード」なんだから、そこで実例を上げてしまうのは話を逆行させるようなもの。
その立場から、「50」ものステレオタイプを導きだし、これだけ描いたのは大したものだと思う。



でもねぇ。
やっぱり「実例」に言及した方が読み物としては面白いわ。
本書で最も読ませるのが、その例外的に作品への言及をしている「宮崎駿」の章なのがその証拠。
ここはやっぱり個別の具体的な作品への言及をビシバシやったほうが良かったんじゃないかなぁ・・・というのが、僕の正直な感想ですワ。(「ウイークエンド・シャッフル」では、そこが面白かったっとも思うんだが)
面白くなかった訳じゃないけどね。
ちょっと残念です。



ちなみに本書の挿画は「オノ・ナツメ」氏が描いている。
僕は作品のレベルの高さは認めるものの、今ひとつオノ氏の漫画には乗り切れないんだけど、この「挿画」は素晴らしかった。
漫画家としてのオノ氏の水準の高さを再認識させられたと言ってもいい。



という訳で、個人的にはこのオノ氏の挿画を見るためだけでも本書の価値はあるかな、と。
少なくとも本書の価値の3、4割は占めてると思いますw。