鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「動員の革命」

・動員の革命 ソーシャルメディアは何を変えたのか
著者:津田大介
出版:中公新書ラクレ



<ソーシャルメディア革命とは、 「動員」の革命なのです。>(p.42)



個人が発信するメディアとして、twitterを初期の段階から活用してきた作者が、現時点でのソーシャルメディアの方向性について論じている作品。
「個人が発信する」あるいは「双方向のメディア」としてソーシャルメディアを語るというのは今では当たり前のことだろう。
作者はそこから一歩進んで「動員」と言う視点をここでは打ち出しているわけだ。



ネットの先端を追いかけている作者だけに、決してこの方向性が今現在のメインストリームというわけではない。
対談に登場する人選を見ても、そこら辺は想像がつくところ。(結構知らない人ばっかりって感じだしw)
ただそういう動きや方向性が見えてきていることは確かだと思う。
ここら辺の見立てはこの作者はしっかりしているよ。



本書では、デモや政治的な活動、 NPO活動に加え、「クラウドファンディング」のようにお金回りでの動きについてもフォローしている。
このクラウドファンディングは結構面白いと思った。
小規模の受注生産をするような事業はこれをベースにして成り立ち得るかな、と。
今でもネット通販というような道はあるが、より個人の嗜好に合わせた製品の作成がこれをベースにしてなり立ち得るかもしれない。
自分が作って欲しいものをネットに上げ、それを製作する人を募り、そのコラボレーションでクラウドファンディングの仕組みに乗せて行く。
こんなことが日常において簡単にできるなら、日常に自分なりのアートを持ち込むことが現実的になるという風に考えてもいいんじゃないだろうか。
こーゆー未来像は結構ワクワクする。



一方で、個人的には、デモやNPO活動の件ついては留保っていうのもあるかな。
確かにその重要性は分かる。
しかしながらこれは同時に個人の時間を占有することにもなる。
時間のある学生はともかく、社会人を巻き込んでいく上においてこの「時間」という要素は非常にネックになると思う。
社会運動において「学生」が重要なファクターなることが分かっているが、それが大きく社会変革につながるためには、やはり社会人をどのように巻き込んでかということが重要だろう。
ソーシャルメディアが「動員」において力を発揮するという点に関しては賛成するが、それを広げていく上においてはソーシャルメディアだけでは解決しがたい課題があるように思う。
まあ、それは本書のメインテーマでもないかもしれないけどね。
(サウンドデモというのは確かに面白そうだけど。デモも参加して楽しめないとね)



そういう意味では、僕から見た「ソーシャルメディア」は「情報の収集・発信」に加えて、「動員」とまでは行かないけど、「アクション」には繋がりつつあるって感じかなぁ。
まぁ、まだまだそこまで行かないっていうのが正直のところだけどね。
いずれにしても、現実に対するなんらかのアプローチにつながりつつあるというところが、「ソーシャルメディア」の面白さだとは思っている。
その認識は作者とも一緒だと思うよ。
それが「革命」にまでつながるかどうかは、何とも言えないけどさw。



なんにしても、ここのところのソーシャルメディアをめぐる動きは恐ろしく目まぐるしい。
動きの先端を拾った本書が、しばらく経ったら完全に古くさくなってしまう、なんてことも十分に考えられる。
そーゆー時代に生きるようになったということでもあるかな。



というわけで、「読むなら、まさに今」という本です。