鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「蜩ノ記」

・蜩ノ記
著者:葉室麟
出版:祥伝社



個人的に「これは号泣」って作品がいくつかあるんだけど(アニメの「火垂るの墓」とかね)、「ベロ出しチョンマ」はその一つ。
あんまり泣けるんで、多分30年以上、目にしないように避けてるくらいだw。


今回の直木賞受賞作で、
「武士は、何をもって武士たるのか」
を問うたこの作品で、その「ベロ出しチョンマ」を見ようとは。
後半の該当箇所を読んでたのは帰りの地下鉄の中だったんだけど、不意にしゃくりあげそうになって困りましたw。
いやはや、参ったよ。


この作者は「いのちなりけり」を読んで感動した上司のすすめで読むようになったんだけど、コンスタントにレベルの高い作品を発表してると思うね。
「ちょっと凝りすぎかなぁ」
って設定もあるんだけど(それは本作にもある)、それを「必然」と思わせるのは作者の腕だろう。
直木賞に相応しい作者だと思うし、「遅すぎる」と言ってもいいくらいだ。
最近の時代小説はシリーズ物に流れるケースが多い印象があるんだけど(それはそれで好きだったりする)、一作品で作品世界を完結させる潔さがこの作者にはあって、それが物語の清廉さにもつながるようで、好感が持てるんだよなぁ。


適度にチャンバラもあってw、映像化にも向くような気がする。
今回の受賞でそう言う話も出てくるだろうね。
ちょっと見て見たい気がします。


藤沢周平の「蝉しぐれ」が好きな人には向いてる作者だと思うんだけど、どうかな?