鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「グーグル ネット覇者の真実」

・グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ
著者:スティーブン・レヴィ 訳:仲達志、池村千秋
出版:阪急コミュニケーションズ



クリスマスの三連休前から読み始めて、読み終えるのに一週間近く。
うーん、通勤を読書タイムにしてるんで、飲み会が続くと、覿面、読書スピードは落ちますなw。
でも面白くなかった訳じゃない。
と言うより、2011年で10本の指には間違いなく入る、刺激的で面白い本だった。
600ページの大部で、結構ビッシリなんだけど、退屈しない内容だと思うよ。


Googleが誕生してから、新しい技術を打ち出しながら世に出、ネット広告で強固なビジネスを築く興隆期。
Gメールやストリートビューでプライバシーの問題に直面し、巨大化した組織が人々の懸念を掻き立てる中、グーグルブックサーチに対する反響で社会の敵視を実感する顛末。
そしてFacebookの台頭により、 追う立場となった現在の混乱。


アップダウンの激しい一連の出来事を、「内部」に近い視点から描いた本書は、暴露本ではないが、それ以上のインパクトのある内容になっている。
正直、技術的なコトをあーだこーだ論じてる辺りはお手上げだったんだけど、そこを読み飛ばしても、十分読み応えのある内容だった。
Googleという存在の意義や考え方、方向性を知るには最良の一冊じゃないかと思う。


個人的には少し前に読んだ「スティーブ・ジョブズ」の伝記(これも11年ベスト10)との対比が面白かった。
ジョブズという人間にスポットを当て、その死の直前までフォローしたあの本は、本そのものがジョブズの作品に重なる印象があった。
自分自身が「検閲」しないことで、期待以上の消費者(=読者)体験を提供すること。
最後までジョブズの美意識を感じさせる作品だった。


対する本作は「人」ではなぅ、「Google」という組織、そこから生まれるサービスやビジネスに焦点が当たっている。
もちろん創業者二人の奇矯さは十分に指摘されているがw、そこを深めた様な作品ではない。
それゆえ(ジョブズの伝記に比して)本書は統一感や完成度の高さは 劣っているかもしれない。
しかしそれこそが「Google的」なのではないか?
もちろんグーグルはまだ「完結した物語」を提供するような状況にないが、もっと本質的な差異が根本にあるんじゃないかと、僕は思う。


もう一つはSNSとの関係。
作者はグーグルの現在の迷走をFacebookを中心としたSNSとの関係に求めているが、見方を変えると、これはグーグルの対するプライバシーの一つの対峙の表れなのかもしれない。
少なくとも僕自身にはそういう意識が何処かにあって、それがブログ/Twitter/Facebookの使い分けに反映しているような気がする。
もちろん僕はグーグル的価値観に敬意を持っているし、グーグルブックサーチなどはもっと積極的に展開して欲しいと思っている。
「パブリック」が世に中を良くしてくれる可能性は高いと、今でも思っている。
思ってはいるが、全てを晒す気にはやっぱりなれないんだよねー。
SNSはそんな(ある意味中途半端な)気持ちにフィットするところがあるように思う。


もちろんグーグルの懸念もわかるよ。
SNSがエリアを広げることでパブリックのエリアが細り、集合知の精度が下がる。
その可能性はある。
だからこそグーグルじゃパブリックの価値を高める活動を強化すべきだろう。
そのことで人々の活動をSNSの閉ざされた輪から引き出せばいい。
SNSに踏み込んでプライバシーの懸念を高めるのは、どっか戦略が違うんじゃないかと思うんだけどね。


「邪悪になるな」
グーグルのこのテーゼは今でも有効か?


僕は有効だと思う。
だがグーグルは自らのテーゼに沿った活動のエリアを自らに問い直すタイミングに来てるのかもしれない…ってのが僕の感想。


一読をオススメします。