鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「ピース」

・ピース
著者:樋口有介
出版:中公文庫



最近、ソコココで評判を聞く作品。
この作者の作品は何作か読んでるけど、あまり印象は強くないなぁ。
なんか、「ソフトボイルド」風のを読んだんじゃないかと思うんだけど…。


本作については、オオモトとなるネタについては、「なるほど」と思わされた。
どんでん返しも上手く効いてる と思うよ。
そういう意味ではアイデアと言う点では水準の高い作品なんじゃないか、と。


ただ「小説」としてはもう少し突っ込んでも良かったんじゃないかな。
キャラの過去を説明し切らず、読む側の想像の余地を残すことで、作品の余韻や深みを醸し出す。
それはそれで分かるし、一定の効果は本作でも出てると思う。
ただ事件の裏にある「怒り」や「恨み」を表現し、陰惨な事件の背景に読者を共感させるという観点では、やはり書き込みが足りないんじゃないかなと。
そう言う共感を排除する話でもないしね。
魅力のあるキャラを出し過ぎて、そう言うストーリー上の余裕を削ってしまったのかもしれない。


ただ「まんだら屋の良平」の畑中純氏による表紙。
これはやられました。
話が結構地味で暗いのにこの表紙は…と思いながら読んでて、終盤で「!」。
極論すれば、本書の最大の「効果」はここにあると言っても良いくらいw。


まあトータルで評価すれば、「読んで損はない」ってトコかな?
出来自体はラッキーパンチかもしんないけどねw。