鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「民法改正」

・民放改正 契約のルールが百年ぶりに変わる
著者:内田貴
出版:ちくま新書



ツイッターでちょっと評判になってたのでAmazonで購入したものの、手にとってみるとあまりのお堅い印象に、
「こりゃ、お蔵入りかな」。
ところが健康診断に行った時、間違って本書しか手元にない状況になり、 やむなく健診の合間に読み出したら…、
面白いじゃん!
結局、健診の時に半分を一気に読み上げ、週末はエンタメ本に流れたものの、週明けになって残りを読破しちゃった。


何か題名と佇まいがスゲー近寄り難いんだけど、踏み込んでみたら、かなり読みやすいし、興味深い内容になっている。
それでいて内容はオーセンティックだと言う(作者は法務省の参与だからね)、ナカナカ得難い作品じゃないかと。


作品の主題は、勿論現在改定作業が進んでいる「民法」についてなんだけど、改定内容をツラツラ列挙するんじゃなくて、まずは日本における「民法」の出自に食い込んでるところが面白い。


明治維新後、国家としての大命題であった「条約改正」。
そのために国内法体系を整備する必要があり、その時間的制約の中で成立したのが日本の「民法」であること。
それゆえ、日本の民法には他国と異なる性格(法外の解釈があってはじめて実務たり得る)が 刻印されていること。
グローバル化の中で契約のベースとなる法体系の共通化が課題となるが、現在の民法の特異性はその障害となっていること。
…等々。


グローバル経済の現状にも考察は及んでいて、視点が実に実務に目配りしてるものになってるんだよなー。
それでいて安手のビジネス書みたいな「法律は法律として」みたいな逃げは打たず、キッチリ法律として実務をフォローし、支えうる方向性を追求する。
うーん、結構得難いぞ。こういうスタンス。


正直、後半の各論的な部分に入ると、理解が追いつかないトコもあるんだけどw、一方で僕の仕事に関係する「約款」に関わる考察なんか実に興味深く読めた。
…っつうか、こんなコト考えたことなかったな〜。
いやはや勉強不足を痛感…。


「民法改正 」自体は長いスパンで取り組まれてることで、その流れの中で国民的議論を喚起したいという考えが作者にはあるようだ。
加えて経済界の実務家が陥りがちな「現状維持」的スタンス(「今、困ってないんだから、このままでいいじゃん」)に対する牽制。
作者の戦略的スタンスも垣間見える内容にもなっている。
「ルールが作られる過程に関与することの重要性」ってのはTPP論議でも指摘されてることだけど、ここら辺は真剣に考えた方がイイね。
なんでもかんでも「変えた方がイイ」とも思わないけどさ。


堅そうだけど、一読の価値はあり…だと思います。