鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「ドラゴン・タトゥーの女」

・ミレニアムⅠ  ドラゴン・タトゥーの女<上・下>
著者:スティーグ・ラーソン 訳:ヘレンハルメ美穂、岩澤雅利
出版:ハヤカワ文庫



下巻のラストを読み終えた時、思わずAmazonで単行本の続きを購入しそうになった。
間を置かずに文庫化されると思い直したけど、間が空くようなら、買っちゃうかもw。
評判が良いのは知ってたけど、思った以上だったなぁ。
多くの読者と同様、僕もヒロイン「リスベット」にはやられちゃいましたw。


まあ、実際にはツッコミどころの少なくない作品でもあるんだけどね。
リスベットの「天才ハッカー」ってのはハリウッド的には使い古されたキャラって感じだし、
主人公ミカエルの艶福家ぶりは非現実的な印象すらある。
メイン・ミステリーとなるヴァンゲル家の悲劇も、何かオドロオドロ過ぎて、やっぱりリアリティに欠けるんじゃないかな。(ミステリーのネタとしては「古臭い」って感じもある)
敵役のやられっぷりも、まあスッキリはするんだけど、何だか呆気ないと言うか…。
作者にとっては小説の処女作になるんだけど、処女作としては素晴らしい水準にあることは認めつつ、処女作らしい上滑りの部分もあるってのが正直なトコロじゃないかね。


それでいて本作が凡庸なハードボイルド/冒険小説と一線を画しているのは、やはり「リスベット・サランデル」というキャラクター。
このエキセントリックでありながら、痛々しいヒロインによって、本作は忘れられない作品になっている。


「年老いた大富豪の依頼 」というハードボイルドの一典型(「大いなる眠り」)で幕を開けた物語は、屈辱を味わった男の再起と復讐という、冒険小説的フォーマットに沿ってストーリーが展開する。
恐るべき一族の秘密でさえ、何処かで聞いたことのあるようなネタとさえ思えたりもする。
だが、リスベット・サランデルは…!


作者が描きたかったのは、多分彼女だろう。
主人公のミカエルにはそこまでの魅力は感じられない。
ラストで立ち尽くした彼女が、今後どんな風にして「人」との距離感を縮めて行くのか?
二作目以降がスゴく楽しみだ。
その道案内をするのが、何だか腰の定まらない女ったらし(ミカエル・ブルムクヴィスト)ってのは、ちょっと物足りないけどねぇ。


あ、いかん。
何かすぐに続きが読みたくなって来たぞ。