鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「『新しい働き方』ができる人の時代」

・「新しい働き方」ができる人の時代 大切なことは「価値」「挑戦」「つながり」
著者:セス・ゴーディン 監訳:神田昌典
出版:三笠書房


僕が社会人になったとき(88年)、会社にはパソコンなんて殆どなかった。
それが今じゃ、「あって当たり前」。
スピード感だけじゃなく、知識のあり方、コミュニケーションの取り方等、社会そのものへのインパクトは物凄く大きい(それは今も継続している)。
パソコンの有無が問われるんじゃなくて、モバイルも含めたデバイスによる人間の「あり方」が議論されるところまで来ちゃっているからねぇ。
そんな中で、「働き方」もドンドン変わってきて、いまや「働く人」の「あり方」までもが問われるようになっている。

ま、本書はそんな流れの中で書かれた作品と言えばいいかな?



本書で作者が示す「新しい働き方(Work3.0)」は「アーティスト」。
その条件として、以下のようなポイントを列挙している。



<・目立った存在になる
・利他心をもつ
・創造的になる
・判断したことに責任をもつ
・人やアイデアを結びつける>



行動としては「与える」ということが非常に重要視され、その中から生まれるコミュニティ(作者は「部族(tribe)」と表現している)を今後の「働き」の重要な「場」として考えているようだ。
作者の次の作品はどうも「TRIBE」という題名らしいから、この点は更に深められるんだろうね。



監訳者が述べているように、本書で論じてられている内容は「どこかで読んだことがあるような」って感じがしなくもない。



ソーシャルネットワークによるコミュニケーションのあり方の変化(これが「部族」を形成するのに大いに役立つのは確か)、「情熱」の重要性、セルフ・ブランディングの持つ意味合い、「利他」の重要性etc、etc・・・



確かにどれも聴いたことがある話ではある。

しかしながらだからといって本書の価値が減ずるものではないだろう。
本書の意義は、そうした流れを「将来の希望・展望」ではなく、「今起きていること」として語っている点にあるんじゃないかと思う。

「既にこういう時代になっている。あなたはどうか?」

自らに問いかけることこそが本書の求めてることなんじゃないかね?



40代半ばを過ぎた身としては何とも辛いもんがあるけどねーw。
更に企業の中に身をおき、組織の管理をする立場としては、なかなか「アーティスト」たちの跋扈を是認するのは勇気がいること。
正直、管理者としては一定レベルの成果物がコンスタントに出てくる「工場」の方が有難いってのはあるんだよね。



一方で、今の時代において「成果」ということを考えたとき、本当に「工場」でいいのかってのもある。
社会の流れが速く、大きい中、果たして大規模な「工場」は「成果」をコンスタントに生み得るのか?
サービス業であれば特にそのことに迷わざるを得ないだろう。
現場での「教育」の困難さは、その顕れの一つだと思う。
だからって「勝手にやりな」って訳にも行かないんだけどねw。



だから、大きな方向性として僕は本書の指し示す方向に反対するつもりはない。
個人としての「あり方」としては、本書は物凄く参考になるし、僕自身、啓発を受けた。
ただそれを如何にして自らが属する組織において実現させるべきなのか?
僕が迷ってるのは、ソコなんだろうな。



答えは今も探している。