「新宿鮫」の第一作が90年発表。
20年経って10作になる訳だ。
本作は「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載されたんだけど、連載開始前の糸井重里との対談で、作者はシリーズについて「飽きた」みたいなことを何回か発言している。
まあそうだろうねw。
時代的背景も取り込んだ(それでいて時事的じゃない匙加減はたいしたもの)結構リアルな物語構成になってるのに、キャラクターたちは半ば「サザエさん」状態。
エンターテインメントとして成立させる作者の「腕」はさすがで、本シリーズの「重み」も分ってるだけにどの作品の水準も高いんだけど(本作も含め)、それでも違和感は残る。
このシリーズの課題の一つはここかもねぇ。
本作についても、重要なキャラクターは「80年代後半に罪を犯し収監され、20数年ぶりに出所」って設定なんだけど、その20年前ってもう「新宿鮫」は新宿で・・・なんて思っちゃうと、厳しいわな、そりゃw。
そこんとこに目をつぶれば、質の高いエンターテインメントを本作でも堪能できるんだけどね。
(設定を「20数年前」にしたのは作者のギリギリの「仕切り」だろう。無理があるのには変わりないけど)
とはいえ「10作目」ってことは作者も意識してたんだろう。
本作はシリーズとしては大きな「区切り」となる内容となっている。
賛否はあるだろうけど、「物語」としては十分「ありえる」展開。
僕は「賛」のほうだな。
ただまあ「晶」との関係はねぇ。
確かにシリーズの性格上、「負担」にはなってきてると思うよ。
正面から取り上げるにはリアリティ感が薄いキャラクターであり、人間関係なんだよな。
シリーズのリアル指向が高まるほど、そこに違和感は強くならざるを得ない。
だからこういう展開も分らなくはないんだけどね。
それでもなお、そこに拘るのもまた「新宿鮫」なんじゃないか、と僕は思うんだけどな。
だから次の作品では再びこの二人の関係を中心にすえた物語が語られることを、僕は密かに願っている。
確か以前も書いたんじゃないかな?
「逃げるな、大沢在昌!」