鈴麻呂日記

50代サラリーマンのつぶやき

読書録「リトル・シスター」

・リトル・シスター
著者:レイモンド・チャンドラー 訳:村上春樹
出版:早川書房



チャンドラーの長編では、
「大いなる眠り」
「さらば愛しき女よ」
「ロング・グッドバイ」
は何回も読み直している。(「プレイバック」もかな)
でもこの「かわいい女」は多分、高校時代かに一回読んだだけで、読み直すのは今回が初めてだと思うなぁ。



<この『リトル・シズター』には、チャンドラーの作品群の中では、比較的世評が高くないという印象がある>(村上春樹あとがき)



確かに僕の印象もそんなところだ。



でも今回、村上春樹の新訳で読んで、ちょっと印象が変わった。
面白かったんだよ、これが。



<僕にとっては昔から一貫して「愛おしい」作品である。>(村上春樹)



とまでは行かないけどね。



何より「色っぽい」って感じなんだよねぇ。
チャンドラー作品には一貫してセクシャルな雰囲気が漂ってるけど、本作には特にそれを強く感じた。
端正で華麗な文章で描かれる物語の狭間から姿を現すヒロイン達のセクシーな言動。(とくにオーファメイとドロレス・ゴンザレス)
村上春樹の訳文のせいってのもあると思うんだけど、ここらへんは高校生じゃ分かりにくかったかもねw。



まあ相変わらずストーリーは「よー分からん」ってところがあるんだけど(犯人は誰?動機は?・・・ってミステリーとしての根幹部分が判然としなかったりする)、チャンドラーはそれでもいいんだよw。
不思議なんだけど、読み終えての満足感や感銘は、そういうところとは全く違うところから来てるんだよなぁ。



あと作品的には「グレート・ギャツビー」が下敷きになってる気もする。
マフィアのスティーブグレイブのモデルはバグジー(・シーゲル)らしいけど、個人的にはそこにギャツビーを重ねてるような気がするんだけど、考え過ぎ?



村上春樹はチャンドラー作品の翻訳を続けてくれるらしい。
「大いなる眠り」を期待してるんだけど、これだと本作同様印象の薄い「高い窓」や「湖中の女」にも新しい発見があるかも。
うーん、楽しみ!